手紙の内容はリズ・キングレーという女性に向けて、宝石の密輸を頼んでいる『誰か』からの手紙だった。

 飛空挺のチケットも同封していると書かれており、決してこれが最初の依頼ではないと読み取れるもの。

 ……ああ。

 私は大きく息をついて手紙を胸に抱き、悲しく辛い絶望的な気持ちになった。

 これをここに置いた人物。それは、ローレンス侯爵に他ならない。

 私は宝石を密輸していた、『誰か』に雇われた工作員。ローレンス侯爵とは無関係で、ただ人の良い彼は私に騙されていたことになるのだろう。

 救ってくれた、優しくしてくれた、私に必要なものを与えてくれた。

 ああ……私という人間を最後まで、利用するために。

「……ああ。シュゼット。戻って来たのかい」

 その声を聞いて背中に緊張が走った。そうよ。この部屋に手紙があるという事は、いつ何があっても私を犯人に仕立てようとしていた。

 彼が居ても何もおかしくない。

「ローレンス侯爵」

 ゆっくりと振り向いて、思って居た通りの人物の名前を呼んだ。