けれど、ローレンス侯爵に拾われなければ堕ちるところまで堕ちていたか、死んでいたと思う。何も持たない一人の女の子が、何もなく生きて行けるほど、この世の中は甘くはない。

 利用されたとしても、救われたことは、間違いない。

 私はあれから知り得た情報から自分なりに考えた結果をクロードに報告すると、彼は大きく息をついた。

「……うん。まあ、そんなとこだと思う。もし万が一シュゼットが捕まったとしても、知らないで済ませるつもりだったんだろうな」

「そうよね」

 飛空挺のロビーの窓から見える雲海は、次々に流れていく。常に変化し続けるしかない、私たちの人生のようだった。

 出来れば、信じていたかった。私を救ってくれたローレンス侯爵を、良い人だと思ったままでいたかった。

 過去にした判断を、決して間違いにしたくはなくて。

「私は……これまでずっと、騙されていたのね」

 ぽつりと言った言葉に、クロードはなんとも言えない顔で頷いた。彼だって私を傷つけたくないはずだ。

 けれど、これは誤魔化しようもない真実だった。