色々と落ち着いた私たちは、一旦ノディウ王国へと帰国することにした。

 空飛ぶ飛空挺で、とんぼ返りだ。

 仕事としてローレンス侯爵に貰ったチケットは、色々あって乗り遅れたと理由を話せば次の便を取ってくれることとなった。

 クロードは『どう考えてもローレンス侯爵が怪しいから、シュゼットの部屋の荷物だけを持ってすぐに逃げよう』と言ったので、私も彼の言い分には同意した。

 私を誘拐した誰かは手紙に入っているものは、『宝石』と言っていた。

 実はノディウ王国の宝石は、質が高く世界でも有名で、欲しいと思う人は多い。

 けれど、出来れば貴重な宝石は自国で流通して欲しいと何代か前の国王によって、輸出される際には、宝石そのものの価値の半額が関税として掛けられることになっている。

 そもそも高価な宝石にそれだけの関税が必要となると、それだけ多額の税収入があるということだ。

 ……私がローレンス侯爵から届けるようにと言付かる、あの固めの封筒には宝石が隠されていてもおかしくはない。

 やけに分厚いと思って居たけれど、大事な書類だから枚数も多いのだろうと思って居た。

 私はもしかしたら、宝石の密輸に、そうとは知らずに関わっていたのではないだろうか。

 ローレンス侯爵邸がやけに裕福な理由。それに、飛空挺は貴族や裕福な商人が多い。

 それに、貴族は特権として荷物検査免除なのだ。

 ……だから、私は『リズ・キングレー』という架空の貴族令嬢になりすまし、宝石を密輸していたということになる。

 それに、私は元々貴族令嬢でドレスだって着慣れていたし、自分で言うのもなんだけど礼儀作法だって出来ている。

 こうして荷物検査免除が出来る貴族令嬢になりすますのなら、もってこいの人物だったのかもしれない。

 ああ……すべてはこれで、筋が通ってしまった。

 ローレンス侯爵は、私をこのためにメイドとして雇った。たまに特別報酬のある仕事として『本当に頼みたい仕事』をさせる。

 だから、私は……あの時に、彼に拾われたのね……。