勇者は持っている加護の関係で、嘘がつけない。だから、私との約束を守り続けていてくれたはずで……。

「俺たちが今こうしている大前提、忘れないでよ……けど、シュゼットは嘘をつける。それに、実は厳密に言うと嘘がつけない訳ではないんだ。代償として寿命が縮むだけで」

「えっ……それは、嫌」

 クロードが嘘をつくと、代償として寿命が削られる。そんなこと、絶対に嫌だった。

「うん。俺はわかってたんだ。嘘は言えないって教えられて、ああ言えばシュゼットのこと、ずっと好きでいられるから」

「私のこと、好きって……信じて良い?」

「再会してから、それをずっと言い続けていたけど、やっとここで信じてくれた?」

 もういつ諦められてもおかしくないくらいに分からず屋だった私にクロードは苦笑いしていたけど、急に真面目な表情を見せた。

 横抱きしていた私をサッと地面に下ろすと、腰に佩いていた剣を抜き放った。

 私が彼がそうした理由を知ったのは、その後のこと。洞窟の中に巨大な黒い影が見えて、クロードはその魔物と対峙していた。

 けれど、それは呆気なく終わってしまった。