それって、この穴に入れば高い場所から、落ちるような感覚になるってことでしょう……。

「うん……シャンデリアが吊されているくらいの高さかな。心配ないよ。俺が受け止めるから」

 ローレンス侯爵邸にあった、あのシャンデリアのこと?

 ……嘘でしょう。無理だわ。

「怖い……クロード、怖いよ……だって、クロードにも怪我をさせてしまうかもしれないし」

 そんな高所から人が振ってくると思えば、彼がどんなに鍛えられた勇者だとしても怪我は避けられないと思うもの。

「大丈夫。大丈夫。万一、肋骨折れたら看病してくれたら良いから」

 私の震えた声を聞いて、クロードは敢えて明るい口調で答えた。

「……死なない?」

「うん。シュゼット残して、死ぬはずがない。そういう面に置いては俺は信用があると思うけど」

 ……クロードが信じられるか、信じられないか。

 信じられる。クロードなら。

 私は心を決めて、目の前にある穴の中へと足を踏み入れた。

――――ふわっとした浮遊感を感じたのは、一瞬。

「クロード」

「頑張ったね。シュゼット」