お呼び出しを申し上げます。お客様の中に世界を救ってくださった勇者様はいらっしゃいませんか?

 二人とももっと、何の心配もなく、幸せな生活をしていたのではない?

 一人で泣き出した私にクロードは何も言えないようだった。

 完全な……八つ当たりだって、わかっていた。クロードは何も悪くない。

「シュゼット。俺は君が居てくれて、幸せだよ。産まれてきてくれて、ありがとう」

「クロード……」

 ゆっくりとした速度で語られる彼の言葉を聞けば、不思議と落ち着いた。

 まるで、何も見えない暗闇の中に小さな光が灯ったようだった。

 クロードは私を好きで居てくれて、ずっと探してくれていた。好きで居てと約束させた私は、彼のことを忘れてしまっているのに。

 二人の関係性の中で、彼を忘れてしまって再会しても良くわからない意地を張ってしまって、悪いのは完全に私だった。

 これまでの話を聞いたクロードにそう言ってもらえただけで、心の中にあった黒いモヤモヤが解き放たれた。

 私はずっと……こういう機会を待っていたのかもしれない。

「うん。わかった。そうか。これをずっと言えなかったんだな。だから、家に帰ることを頑なになっていたんだ。俺は理解したよ。シュゼット」

 私が一人生きて行くことにこだわる理由。やっと手にした仕事を手放したくなかった理由。

 クロードにこうしてわかってもらえることで、私はようやく楽になれた。

「ごめんなさい。クロード……私。ここから出たい」

 心臓をぎゅうっと掴まれるようなあの怖い悪夢から、いい加減私も解き放たれたかった。