お呼び出しを申し上げます。お客様の中に世界を救ってくださった勇者様はいらっしゃいませんか?

 クロードはだから私が起きるのを、ずっと待っていたんだ。

 身を包む不自然な暗黒は、魔法的な何かが関係していると思えば不思議ではない。

 ぞわりと嫌な気持ちが、心の奥底からわき上がるのも。

「私……嫌な夢を見ていたの」

「シュゼット?」

 唐突に話し始めた私に、クロードは戸惑っているようだ。私だって何故ここで、この話をしようと思ったのかわからない。

 けれど、止まらない。ずっと誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。

 何も見えない暗闇の中に居ると、心が弱くなってきた。

「あの時の……こと。家出した時のこと」

 私は記憶に蓋をして、なるべくあの時のことを思い出さないようにしようと決めていた。

「……シュゼット。どうして……あの時に、家出したの? 本当の理由を教えてよ。シュゼットのお父さんは、君のことを心配してずっと探していたよ」

 自分で自分を抱きしめた私が話し始めて、クロードはここであまり刺激しない方が良いと思ったのか、ゆっくりとした口調で質問をした。

 ああ。お父様……お母様。元気だろうか。