黒い髪は短く整えられ、その瞳は、まるで窓に映る空の抜けるような青。

 私はいかにも冒険者といった出で立ちの彼を見て、大きくなって……立派になって……と、久しぶりに親戚の子を見たような、しんみりした気分になってしまう。

 小さな天使クロードが、成長して素敵な男性になっているという、時間の流れにだって感慨深く思った。

 この私にだって、色々あったもの……クロードにだって、色々あったことは想像に難(かた)くない。

 ……なにせ、彼は世界を救った勇者様だもの。

 勇者パーティが一年ほど前に魔王を倒し、世界を救ってくれたというニュースは、全世界を駆け抜けた一大ニュースだった。

 私は新聞で勇者の名前を見た時、同じ名前だわ程度には思ったかもしれない。慣例で写真も掲載されていたはずだけれど、私はそれを見ることもしなかった。

 生きるために忙しい毎日をこなすだけで精一杯で、勇者の名前を見て、それを思ったこともすぐに忘れてしまっていた。

 今、こうして彼の姿を目にすると間違いなく……私の幼馴染の……あのクロードで、間違いないわ。

「……クロード!」