お呼び出しを申し上げます。お客様の中に世界を救ってくださった勇者様はいらっしゃいませんか?

 何も見えない。

 目をまだ閉じているのかと思って何回か瞬きをしても、見えないままだった。

 慌てて手探りしても何もないから、おそらくは光の届かない地下……それか、洞窟の中に居る。

「う、うそでしょう……」

 私は飛空挺から降りた時に、誘拐されてしまった。

 しかも、何も見えない。手の当たるようなところにも何もない。床は触った感じは、少し湿っぽい石に思える。洞窟の中なのかもしれない。

「どうしよう……! クロード……!」

「……はい」

 私が半狂乱になりかけて彼の名前を呼んだ時、クロードのやる気のない声が聞こえた。

 何……? 幻聴にしては、やけにはっきりしていたわ。

「……クロード?」

「はい。俺の忠告を完全無視したシュゼットさん」

 クロードだ! 本当に、クロードの声だった。

「どうして……ここに居るの?」

「シュゼットを助けに来たからに決まっていると思うけど」

 それはわかるけれど、どうやってここにまで来たの……? 彼はノディウ王国に居るはずなのに。

「違うわ。私は飛空挺に乗って、リベルカ王国に来たのよ。どうして、クロードがここに居るの?」