遠くの方でいくつもの声が聞こえる。

 ……あった。あった! これだ! これさえあれば、俺たちは一生安泰に暮らせる。

 ……あの女は、どうするんだ。用無しだし、売っても殺しても良いと言われたが。

 ……売れば良いだろう。高価なドレスを着て貴族令嬢に化けられる女が、平民であるはずがない。どうせ没落した上流階級の女だ。売れば良い値がつく。

 ……おい。夢見が悪くなることは良そう。どうせこの宝石があれば、唸るほどの金になる。女を売るにしても、売り先を探したりと時間がかかる。依頼人の元に行くのが先だ。置いて行こう。

 そこで複数の足音が混ざり合い、遠ざかって行った。


◇◆◇


「! ……はあっはあっ……え?」

 久しぶりに悪い夢を見ていた私が荒い息で目を開けば、そこは暗黒の世界だった。