私はいつも通り偽名で乗船し、貴族令嬢の格好で日々を過ごす……仮病を使って先に仕事に向かってもらったクロードには、部屋に置き手紙をして。

 だって、彼には絶対に反対されると思った。ローレンス侯爵から指定された日程的に、言い争う時間がなかったのだ。

 すぐに帰ることが出来るから、説明すればわかってもらえると思う……クロードにはすっごく怒られてしまうだろうけれど、それでも良い。

 私の気持ちではこのお仕事だけは、絶対にしておきたかったもの。

 いかに様々な術を使うことの出来る勇者クロードとあろうとも、先に出発してしまった飛空挺にたどり着ける訳はないはず。

 私は手紙を渡して渡されてトンボ返りすれば良いだけの話だし、そんなに難しい仕事ではないのだから。

 そろそろ、リベルカ王国に到着するといういつもの放送が鳴った。

 ……はーっ……短時間だけれど、そろそろ地上に立てるのね。やはり、空の上に居ると平衡感覚が狂う気がする。

 これでこの仕事もすることもないしもう終わりなのねと思えば、なんだか寂しい気もした。

 特別報酬は美味しかった……一人暮らしとなると何かと物入りで、臨時収入があれば急な出費にも安心でメイドには贅沢品だって買えたからだ。

 私はいつも通りに用意されていた馬車に乗ろうとした時、背後から誰かに抱きつかれ鼻に布をあてられて薬品を嗅がされた。