「シュゼット。辞めたいと言っているところ悪いけれど、すぐに君の代わりを見付けるから。この一回だけだよ。頼む」

 ローレンス侯爵の都合もあるだろうし、いきなり仕事を辞めると言い出したのは、他ならない私だ。後任がすぐには見つからないから、これだけはと言う気持ちも理解出来る。

 どうしようかとは心の中で葛藤した。クロードにはもうやってはいけないと言われているけれど、彼はきっと私の意志を尊重してくれるだろう。

 そうよ。ここまで何回も引き受けたって、危ないことなんてひとつもなかった。

 ローレンス侯爵には……今までとてもお世話になっていたもの。

 これだけは、引き受けよう。

「……わかりました。お引き受けします」

「ありがとう……! シュゼット、助かったよ……」

 一度大きく頷いた私はローレンス侯爵に手を握られて、彼には最後の恩返しをしようと思った。


◇◆◇


 ローレンス侯爵から頼まれた最後の特別な仕事となる行きの往路。

 ……飛空挺内は、とても暇だった。