「そんな! ローレンス侯爵邸の仕事に、不満なんてありません。皆様良くしてくださいますし、やり甲斐を持っております。ですが、あの……そろそろ私も結婚を……」

 仕事を辞めてクロードと出て行くということは、そういうことだ。言葉にしてしまうと急に恥ずかしくなり、顔が熱くなって来た。

 ……いえいえ。何の恥ずかしいこともしていないはずよ。先方にとっては使用人が結婚して仕事を辞めるなんて、良くあることのはずだもの。

「そうか。シュゼットもそんな歳なんだね。月日が流れるのも早いものだ」

 私が家出してかた2年の月日が経ち、ここで雇ってもらい仕事にもようやく慣れた。多忙な月日が流れるのは早く、ローレンス侯爵も同じように思って居るようだった。

「……ええ」

「だが、すまない。最後にこの一回だけ、リベルカ王国へのお使いを頼まれてくれるかい?」

「あ。ええと……」

 実は、クロードには危険だからもうあの仕事は請けない方が良いと言われていた。

 けれど、私から言わせると貴族令嬢の振りをして、手紙を届けるだけなのだ。どうしてそんなに警戒しているのだろうと、不思議だった。