嬉しそうに笑うクロードを見て、私の決心はついた。

「あの……あの、クロード。この前に会っていた女性なんだけど……」

「女性? 誰のこと?」

 私の質問に対し、何の事だろうと不思議そうにするクロード。

 もしかして、誤魔化そうとしている? ……ううん。そんな訳ない。クロードはそんなことしないもの。

 ここで……ちゃんと聞くって決めたでしょう。シュゼット。

「この前、窓から見たの。クロードは路地裏で、女性と会っていたわ」

「ああ……あれか。テレーズのことか」

「テレーズ?」

 首を傾げた私はその名前に、聞き覚えがあった。私たちが生まれ育った、リベルカ王国のお姫様のお名前だ。

 王族が新しく誕生すれば、不敬だと同じ名前はあまり使われなくなる。だから、リベルカ王国にはテレーズ姫より年下の女の子はあまり居ないはずだ。

「うん。テレーズ・エヴァンス。王族の姫だよ」

「え! そうなの? どうして、お姫様がこんなところまで?」

 私は一瞬ひどく焦ってしまった。だって、お姫様はクロードのことが好きだから、こんな長距離を移動して来ているということになる。