名乗り出てくれた勇者様は、短時間の鮮やかな戦い振りで、なんなく鳥型の大型魔物を海へと沈めた。

 私はただ、それを安全な窓の内側から見ていただけで、勇者たる彼が何をしたか理解出来なかった。けど、空から十字の白い光が走り、魔物はそれに当たり落ちて行った。

 船外の甲板に出て戦闘していた勇者は、乗客たちの歓声に迎え入れられ、感謝を込めて大きな拍手喝采を受けていた。

 私は久しぶりのあまりの懐かしさから、彼に話しかけようと思ったけれど、今は止めておこう……クロードはいま運営会社側の人と、何か真剣な話をしているようだから。

 魔物退治はあちらから呼び出しで仕事になった訳だから、この戦いの報酬について話しているのかもしれない。

 呼びだしておいて無料で人助けしろなんて、虫が良すぎるものね。