「なんだか……妙に浮かない顔をしているね」

 なんと、私が居た寮の屋上に居るとんがり屋根に竜は爪を立てて留まり、竜に乗っていた男性は颯爽と飛び降りた。

 黒いローブは長くて、まるでマントのように風で翻った。

「……こんばんは」

 ここで自分が何を言うべきかと考えた時に、一番無難な時間帯に合った挨拶を口にしてしまった。他に何か名案ある人は、どうか提案して欲しい。

「こんばんは。もしかして、何か悩み事でもあるの? たった一人で……こんな場所で」

 深い森の中にある大きな城館の中、アクィラ魔法学園の高等部の女子寮は、張り出した東館の奥まった場所にある。

 私はあまり人が来ることのない屋上に居た。

 この場所のひと気のなさなのなら、学園一番と言えると思う。

「……貴方は、誰なんですか?」

 私が今非常に悩んでいることは、かなりセンシティブと言えて、多くの人の命を左右してしまう問題なのだ。

 初対面の人がそれを知るわけもないけど、強い警戒心を込めてそう言えば、彼はにこにこと安心させるような笑顔で言った。

「偶然にここを通りがかった、旅の者だよ。あれは、俺の使い魔のレライエ。君が俺らについて、何か言っていると言い出したのは、あいつだ。誰かに狙われることを防ぐため、自分たちに関する会話は、ある程度の距離の範囲は聞こえるようになっている」

 そう言って、彼はこちらに視線を向けている夜の黒に浮き上がる白竜を指差した。

 ……やっぱり、竜を使い魔に出来るなんて、私と変わらないくらい若く見えるのにすごい。