(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!

 二人とも実力は拮抗しているのか、純粋な魔力の強さで勝るエルネストが押しているものの、対するサザールは何個も風の刃を生み出し彼へと攻撃していた。

 二人の攻撃の応酬はリズムよくラリーのように続いていて、周囲を取り巻く私たちが何かしようものなら、エルネストに怪我をさせてしまいそうで加勢することも難しそうだった。

 もうすぐエルネストの勝利で終わるだろう。そう思って居た矢先に、顔を歪ませたサザールは客席に届くように風の刃をまき散らし、驚いたエルネストはそれを自分の魔力で防ごうとして広範囲に渡る氷の膜を作ったようだ。

「……危ない!」

 私が放った炎の矢は、サザールが不意をついて放った風の刃を壊した。

「卑怯な手を……」

 悔しそうにエルネストはつぶやき、サザールは素知らぬ顔で肩を竦めた。

「何を言う。単に手元が狂ったんだ。さあ、続けよう」

 サザールはなんでもない事のように、にやにやとした嫌な笑いを見せた。

 私はその瞬間、赤魔法を放ちサザールの結界を焼いた。半球の結界が紙のように焼かれものの見事に消え去り、その間に近付いていたエルネストは、サザールの膝を付かせた。