「まあ……お兄様。それってどういう意味ですか? 私は一度では理解仕切れず、申し訳ございません」

 すまなそうに口に手を当てて、私は肩を竦めた。ここで私が何か言い返したり嫌な態度を取っても、サザールと共に私の評価が下がってしまう。

 敢えてわからない振りをしているとサザールも周囲も思うだろうけれど、それで良いの。

 色々と評価が下がってしまうのは、性格の悪い兄だけで良いわ。

「……お前、それわざとだろ? 生意気を言うのも、いい加減にしろよ」

 私は聞こえない振りをして、アクィラの先輩たちの方向へ向かった。

 あー。はいはい。そちらがわかっていることも、わかってますよーっだ。その時に、背後でブンッと鋭い音がして、私が振り向くと、黒い影が大きな刃を受け止めていた。

 えっ……? 何。イエルクの黒魔法……?

「申し訳ありません。僕が聞き逃したのだと思いますが……ディリンジャー先輩に何かしら非があったとしても、魔法界では誰かを身体的に害することは、法律で禁じられています。もしかしたら、グーフォの授業が進んでいなくて、知らないのかも……しれないですが」