開始直後にサザールがとんでもないことを仕出かしたのだけど、審判(レフェリー)は彼の言い分を信じてお咎めなしで進むらしい。

「ふん。アクィラに入った役目も果たさずにディリンジャー家に、何の利益ももたらさぬような男を引っかけたのか。エルネスト殿下には嫌われてしまって、何の話を聞いてももらえず可哀想なことになっていると聞いたが……本当のようだな」

 私を庇いに来たのは、イエルクで……彼は、ドワーフに育てられた魔法使いで、確かに彼と結婚したからと政略的な意味での恩恵はないかもしれないけれど、成績は抜群で神童と呼ばれているのよ。

 両親から関係を深めるように命じられていたエルネストについては、そういった意味で相手にされていないのは確かだけれど、最近は恋愛めいた事を言い出して迫らなくなったせいか、普通の会話ならば話してくれる。

 今だって審判と話していなければ、紳士な彼は庇いに来てくれた可能性だって考えられるのだ。

 サザールは私を似て嘲るように顎を上げたけれど、私は何もわかっていない振りをすることにした。