いくら中身が現代を生きた三十路でも、周囲の視線も気になってしまうような事を言われた。もし、これが普通にロゼッタが聞いていたら?

 どれだけ何も悪くない妹を、傷つけるつもりなの。あまりに酷すぎるわ。

 ……私には何も言えないって、言わないってそう思って居るの?

「何を……」

「僕らが勝ったらディリンジャー先輩に、謝ってください」

 私が言い返そうとしたら、イエルクが前に出て、サザールと相対していた。庇ってくれたイエルクの黒い背中を見て、私は冷静になれた。

「なんだよ。お前……家族の問題なんだから、関係ないだろ?」

「さっきの攻撃……手元が狂ったなんて、白々しい言い訳が通じるのは、一回だけですよ。二回はないです」

 その時のイエルクは今までに、一回も聞いたこともない冷たい声を出していた。

 そうよね……怒ってこんな場所で喧嘩しても、何の良いこともない。こんな兄なんて、一秒だって相手にしたくない。

「お兄様のお好きに言って貰っても構わないわ……早く、始めましょう」