掃除で残っていた人たちも帰宅し始め教室にいるのは、課題をやっている僕だけになった。
周りが静かになったことで順調に進み始め、英語の課題はあっという間に終わらせることが出来た。このままさっさと帰ってしまおうと考えていたが、苦手な数学に入りペースが一気に落ち始める。
「あ~終わんねー」
集中力が限りなくゼロになった僕は雄叫びを上げる。こうなってしまうと全く進まなくなるもので何度もシャーペンを持ち直しては机に置いた。しばらく進まない課題と格闘していたがそれもすぐに限界を迎え、諦めて一度手を止めた。軽いストレッチをして固まった身体をほぐしながら、改めて誰もいない教室を見回す。がらんどうになった教室は空虚な僕の心のように冷たく、侘しい空間に見えてくる。僕はこの空間に取り残されることが急に怖くなり、一度休憩を言い訳に自動販売機へ行くことにした。
教室を出て自動販売機のある一階に降りるために階段へ向かうとサッカー部の後輩たちが走っていた。この学校の階段は上から下まで一直線に連なっているためトレーニングには最適な場所であり、僕も怪我でサッカーができなくなるまでは散々走らされた。
「河上先輩ですか?」
後輩の1人が僕に気が付き声を掛けてきた。
彼の言葉で他の人も僕に気が付き、走るのを止めて挨拶をし始めた。山本との一件もあった手前、今1番会いたくない存在の人に声を掛けられてしまった。
「今週試合なんで良かったら先輩も来てください!」
ほんの1ヶ月前まで一緒に練習していた仲間だが、前よりも眩しく見える。
「リハビリもあるから時間があったら顔を出すよ」
僕は取ってつけたような笑顔で返し、再び走り始めた彼らから逃げるように足早に階段を降った。階段を降り終えると図書室があり、左奥へ進むと目的の自動販売機がある。後輩から一刻も早く離れられるようにと急いだため怪我をした脚が痛み、着くと同時に僕は壁に寄りかかった。
こんなことで動けなくなる自分の情けなさに笑えてくる。
痛みが治るまでしばらく待ち、僕は自動販売機に向き直る。
放課後ということもあって2台ある自販機も売り切れが目立ち、お目当てだったエナジードリンクは売っていなかった。仕方が無いので渋々缶コーヒーを買い、ゆっくり歩きながら飲み始めた。
本来ここですぐに教室に戻るべきなのであろうが山積みの課題を思い出すとそんな気も失せてくる。そのためコーヒーを飲みながらしばらく校内を巡ることにした。
各教室では美術部や吹奏楽部などの文化部が活動している。運動部でずっと外にいた僕には見る機会がなくどの部活も真新しく輝いた光景である。だが同時に今こんなことをしている自分が酷く惨めに思えてくる。
「でも所詮部活だろ」
僕は廊下で1人吐き捨てるように言った。
自分の中の本音とホンネが食い違う。
周りが静かになったことで順調に進み始め、英語の課題はあっという間に終わらせることが出来た。このままさっさと帰ってしまおうと考えていたが、苦手な数学に入りペースが一気に落ち始める。
「あ~終わんねー」
集中力が限りなくゼロになった僕は雄叫びを上げる。こうなってしまうと全く進まなくなるもので何度もシャーペンを持ち直しては机に置いた。しばらく進まない課題と格闘していたがそれもすぐに限界を迎え、諦めて一度手を止めた。軽いストレッチをして固まった身体をほぐしながら、改めて誰もいない教室を見回す。がらんどうになった教室は空虚な僕の心のように冷たく、侘しい空間に見えてくる。僕はこの空間に取り残されることが急に怖くなり、一度休憩を言い訳に自動販売機へ行くことにした。
教室を出て自動販売機のある一階に降りるために階段へ向かうとサッカー部の後輩たちが走っていた。この学校の階段は上から下まで一直線に連なっているためトレーニングには最適な場所であり、僕も怪我でサッカーができなくなるまでは散々走らされた。
「河上先輩ですか?」
後輩の1人が僕に気が付き声を掛けてきた。
彼の言葉で他の人も僕に気が付き、走るのを止めて挨拶をし始めた。山本との一件もあった手前、今1番会いたくない存在の人に声を掛けられてしまった。
「今週試合なんで良かったら先輩も来てください!」
ほんの1ヶ月前まで一緒に練習していた仲間だが、前よりも眩しく見える。
「リハビリもあるから時間があったら顔を出すよ」
僕は取ってつけたような笑顔で返し、再び走り始めた彼らから逃げるように足早に階段を降った。階段を降り終えると図書室があり、左奥へ進むと目的の自動販売機がある。後輩から一刻も早く離れられるようにと急いだため怪我をした脚が痛み、着くと同時に僕は壁に寄りかかった。
こんなことで動けなくなる自分の情けなさに笑えてくる。
痛みが治るまでしばらく待ち、僕は自動販売機に向き直る。
放課後ということもあって2台ある自販機も売り切れが目立ち、お目当てだったエナジードリンクは売っていなかった。仕方が無いので渋々缶コーヒーを買い、ゆっくり歩きながら飲み始めた。
本来ここですぐに教室に戻るべきなのであろうが山積みの課題を思い出すとそんな気も失せてくる。そのためコーヒーを飲みながらしばらく校内を巡ることにした。
各教室では美術部や吹奏楽部などの文化部が活動している。運動部でずっと外にいた僕には見る機会がなくどの部活も真新しく輝いた光景である。だが同時に今こんなことをしている自分が酷く惨めに思えてくる。
「でも所詮部活だろ」
僕は廊下で1人吐き捨てるように言った。
自分の中の本音とホンネが食い違う。



