「大会前にイチャイチャしないで貰える〜」
 栞里がニヤニヤしながら着替え始めた、私の肩をつつく。
「別にそんなのじゃないよ。ただ今の私に言えることなんてそれくらいだから」
「健気だねえ。楓のこと好きな人なんていくらでも居るのに勿体無いなあ。」
「それを言うなら栞里だって涼介のことフったんでしょ。いい人そうなのに勿体無いよ。」
 このままだといつまでも続けられる予感がして、私は栞里の話にすり替える。前に答えていたら部活中ずっと透のことについて聞かれたことがあり咄嗟に防衛本能が働いた。
「私は当分恋愛しないって決めてるの。それに大会もあるしね。」
 2年の秋大会の時も同じことを言っていたが丁度今の時期くらいに彼氏を作っており、栞里の言っていることはあまり当てにならない。
「じゃあさっさと着替えてグランド行くよ!」
 ちょうどお互い着替え終わり、教室の時とは反対で私が栞里を引き連れてグラウンドに続く階段を下る。
 陸上部も関東大会まで2週間を切り、練習メニューもタイムトライアルやリレーのバトン練習など大会に近いものになってきた。それにつれて少しずつ部内にも緊張感が増してきた。隣ではサッカー部が練習をしているが当然のことながら透の姿は無い。当たり前のように居たはずなのに、何だかずいぶん遠い昔のことの様に感じられる。
やっぱりもう無理なのだろうか、、