俺は自分で言うのもなんだが大学サッカー界のスターと言える選手だった。試合を行えばプロチームのスカウトが見に来て、名刺を渡してきた。一時は名刺でトランプが出来るのではないかと考えるくらい天狗になっていた時期もあったが、今思い返してもその自信に間違えは無かったと言えるくらい頭一つ抜けていた。
だが3年生のある日、試合中に相手から悪質なタックルを受け大怪我をおった。チームのエースは活躍の出来る反面、常に怪我のリスクはあった。だからリハビリや中々本調子に戻らない事は、卒業までの時間もあったし自分の中ではそこまで悩むことではなかった。それ以上にこれまで来ていたスカウトが全くと言っていいほど来なくなったことの方が俺のプライドを傷つけた。部員は気遣い優しくしてくれたが、心に余裕がなくむしろ割れ物に触れないようにされていると感じた俺は当たり散らかした。
結局、4年になっても成績が良くなることは無く桜が散り切る前に部活を辞めた。幸い一年の時から必要な単位を取っていたのでそのまま教師になることが出来た。今でもあの時の自分の選択が正しかったのか考えることがある。だが何度あの時に戻ることができても結局は同じ結末を迎えていたのだろうと今では思っている。
河上は俺とは違い、天狗になる事もなくひたすたら目標に進んできた。だからこそ、その夢を失った今はあの時の俺よりも、苦しく、辛いものである。賭けたものが大きければ大きいほど、失った時の喪失感たるや計り知れない。俺は教師という次の道を見つけることができたが河上は未だに見つけることが出来ていない。何とか次に彼を進ませる為にも波風を立てずに様子を見ているが、それも今回の山本のようなことが起きてしまっては考えなければならなくなった。
自分の机に目線を戻し、どうしたものかと考えていると携帯の通知音が鳴る。机から拾い上げトーク画面を開くと大学時代の仲間から飲み会の誘いが来ていた。現役時代はぶつかり合っていたが卒業後に謝罪し、部員とは和解することが叶った。最近は連絡を取り合い、時々集まれるくらいまでに関係が修復された。
河上と山本も話し合えるようになればきっとお互いが抱えている悩みや苦しみを分け合うことができると思うが、今はそれを叶える事は難しいだろう。
教師として俺にできることは一体何なんなのだろうか。
小テストの採点をしながら、俺はずっとその事を考えていた。
だが3年生のある日、試合中に相手から悪質なタックルを受け大怪我をおった。チームのエースは活躍の出来る反面、常に怪我のリスクはあった。だからリハビリや中々本調子に戻らない事は、卒業までの時間もあったし自分の中ではそこまで悩むことではなかった。それ以上にこれまで来ていたスカウトが全くと言っていいほど来なくなったことの方が俺のプライドを傷つけた。部員は気遣い優しくしてくれたが、心に余裕がなくむしろ割れ物に触れないようにされていると感じた俺は当たり散らかした。
結局、4年になっても成績が良くなることは無く桜が散り切る前に部活を辞めた。幸い一年の時から必要な単位を取っていたのでそのまま教師になることが出来た。今でもあの時の自分の選択が正しかったのか考えることがある。だが何度あの時に戻ることができても結局は同じ結末を迎えていたのだろうと今では思っている。
河上は俺とは違い、天狗になる事もなくひたすたら目標に進んできた。だからこそ、その夢を失った今はあの時の俺よりも、苦しく、辛いものである。賭けたものが大きければ大きいほど、失った時の喪失感たるや計り知れない。俺は教師という次の道を見つけることができたが河上は未だに見つけることが出来ていない。何とか次に彼を進ませる為にも波風を立てずに様子を見ているが、それも今回の山本のようなことが起きてしまっては考えなければならなくなった。
自分の机に目線を戻し、どうしたものかと考えていると携帯の通知音が鳴る。机から拾い上げトーク画面を開くと大学時代の仲間から飲み会の誘いが来ていた。現役時代はぶつかり合っていたが卒業後に謝罪し、部員とは和解することが叶った。最近は連絡を取り合い、時々集まれるくらいまでに関係が修復された。
河上と山本も話し合えるようになればきっとお互いが抱えている悩みや苦しみを分け合うことができると思うが、今はそれを叶える事は難しいだろう。
教師として俺にできることは一体何なんなのだろうか。
小テストの採点をしながら、俺はずっとその事を考えていた。



