一限の現代文を終え、みんなが体育へ向かっている所を僕は1人反対方向へと向かった。体育着を忘れたから借りに行く訳ではなく、単純にサボりである。僕の学校は都内でも有数な広さを誇っており、先生にバレない空き教室など山ほどある。中でも校舎の南側にある教室は使われていないことが多く授業に出ない時はよく使っている。
「お前のクラス次体育じゃなかったっけ?」
まさに教室に入ろうとした直前で声をかけられた。振り返るとサッカー部の山本が忘れ物を取りに来たのか教科書を持って立っていた。
「そうだよ。めんどくさいからサボってる」
 今更嘘をついても仕方がないので僕は悪びれることもなく淡々と答える。
「お前そんなんで大丈夫なのかよ」
「大丈夫、心配されなくても上手くやってるよ」
「なら良いけど、、、透また部活に戻ってきてくれないか?」
「遠慮しとくよ、役立たずが来ても邪魔なだけだろ」
 朝の楓といい、今日の僕はついていないようだ。
「そんな事誰も思ってないよ」
「お前らがどう思っているのか知らないが、俺は戻るつもりはない」
 早く終わらせたい僕は食い下がる山本を切り離す。
「ならせめて今みたいなダラけた生活はやめてくれ。大会前に“元部長”がそんなんだと困る。」
「そんなもの気にしてる奴が全国なんて行けると思ってんのか?薄っぺらい夢なんか捨てちまえよ」
 自分の中で抑え込んでいた苛立ちが抑えきれなくなり言葉に乗る。
「お前みたいなやつが夢をかたるんじゃなねぇよ」
「それに所詮部活だろ」
 僕の放った言葉に山本も怒りを抑えきれなくなり胸ぐらを掴んで自分の近くに引き寄せ、反対の手は拳を握りしめた。

 これは天罰だと俺は思う。

 楓にも山本にも先生にも迷惑をかけていることは分かっている。でも、自分の中にあるやり場の無い怒りや不甲斐なさが僕を掴んで離さない。だからこの結末は、自分で作り上げているのだ。
 楓にも謝らなきゃな、、
 山本の拳を受けるために目を瞑り、身を委ねる。
「お前ら何やってんだ」
 拳が僕に当たる直前で、通りがかった武田先生が怒鳴りながら静止させる。
 やっぱり今日の僕はついていない様だ。