大学の正門の前で待ち合わせして、里山は僕に気づいたら小さく手を振った。水色のパーカーに負けないほどの、爽やかな笑顔を見せながら。
「海老沢くん!」
「や、やあ…」
眩しい…チラホラと女子がこちらを見ている。羨ましい?羨ましいだろうね。こっちは緊張してるけど。
じゃあ行きますか!と僕が大袈裟に言うとさらに里山は笑った。
ラーメン屋にはメニューは一つしかない。中華そばのみ。
それでも満席になることが多いこの店は、店主が少し気難しいので、学生はあまりいない。だけど僕と岡田はそういうのは平気だから通っていた。
「話したらダメなの?」
カウンター席に座り、壁の貼り紙を見ながらコソッと里山が耳打ちして来た。
「ダメだよ。食べ終えて店出るまで禁止」
店内に聞こえる音は、麺を啜る音と店主がラーメンを作る音のみ。
「そんなあ、海老沢君と話したいのに」
里山の声に店主がピクリと動く。
「そこ、貼り紙見えないのか」
その声に慌てて頭を下げる。それ以上は何も言わずにラーメンの提供を待つ。
悪いことしたかなあ、と若干思ったけどそのあと出てきたラーメンを啜った後の里山のうまそうな顔にホッとした。
引き戸を開けて暖簾をくぐり、外に出るとようやく沈黙タイムからの解禁だ。
「どうだった?」
「美味しかった!人生で一番かもしれない」
「そんな、大袈裟な。おやっさんが気難しいけど、味はいいんだよねぇ」
「あ、確かに少し怖かった」
里山が苦笑いしながらそう言う。
「だよね」
僕と話したいのに、と言っていたなあと思い出して、さすがにこのままじゃかわいそうかなあ…
時計を見るとまだバイトの時間までかなり余裕がある。
「口直しにコーヒーでも飲みに行く?」
そう僕が言うと、里山はやった、と小さく呟く。
「うん、行こう。じゃあ今度は俺のおすすめで」
イケメンの通うカフェはやっぱりオシャレなんだな、と連れてきてもらったカフェの内装を見ながら僕は思った。
コンクリート打ちっぱなしの店内。冷たく見えそうなのに、木のインテリアと沢山の観葉植物でそれがカバーされいい感じにスタイリッシュ。テラス席には可愛い女の子たちがお茶していた。パソコンで作業しながらコーヒーを飲む男性や何か語り合ってるカップル。みんなおしゃれに見える。
出されたメニューもやたら長い名前の飲み物、食べ物。とりあえず僕は、カフェオレにしておこう…
「このカフェ、お気に入りなんだ。友達から教えてもらってさ」
「へ、へぇ」
友達もまたオシャレなんだなあ。僕のカフェオレと里山の長ったらしい名前の飲み物が運ばれてきて飲みながら色々話をする。
ゆったりした店内の空気。心地よく流れるBGM。
無言で食べる、気まずいラーメン屋なんかと全く違う。やっぱり世界が違うんだなあ…
「海老沢くん!」
「や、やあ…」
眩しい…チラホラと女子がこちらを見ている。羨ましい?羨ましいだろうね。こっちは緊張してるけど。
じゃあ行きますか!と僕が大袈裟に言うとさらに里山は笑った。
ラーメン屋にはメニューは一つしかない。中華そばのみ。
それでも満席になることが多いこの店は、店主が少し気難しいので、学生はあまりいない。だけど僕と岡田はそういうのは平気だから通っていた。
「話したらダメなの?」
カウンター席に座り、壁の貼り紙を見ながらコソッと里山が耳打ちして来た。
「ダメだよ。食べ終えて店出るまで禁止」
店内に聞こえる音は、麺を啜る音と店主がラーメンを作る音のみ。
「そんなあ、海老沢君と話したいのに」
里山の声に店主がピクリと動く。
「そこ、貼り紙見えないのか」
その声に慌てて頭を下げる。それ以上は何も言わずにラーメンの提供を待つ。
悪いことしたかなあ、と若干思ったけどそのあと出てきたラーメンを啜った後の里山のうまそうな顔にホッとした。
引き戸を開けて暖簾をくぐり、外に出るとようやく沈黙タイムからの解禁だ。
「どうだった?」
「美味しかった!人生で一番かもしれない」
「そんな、大袈裟な。おやっさんが気難しいけど、味はいいんだよねぇ」
「あ、確かに少し怖かった」
里山が苦笑いしながらそう言う。
「だよね」
僕と話したいのに、と言っていたなあと思い出して、さすがにこのままじゃかわいそうかなあ…
時計を見るとまだバイトの時間までかなり余裕がある。
「口直しにコーヒーでも飲みに行く?」
そう僕が言うと、里山はやった、と小さく呟く。
「うん、行こう。じゃあ今度は俺のおすすめで」
イケメンの通うカフェはやっぱりオシャレなんだな、と連れてきてもらったカフェの内装を見ながら僕は思った。
コンクリート打ちっぱなしの店内。冷たく見えそうなのに、木のインテリアと沢山の観葉植物でそれがカバーされいい感じにスタイリッシュ。テラス席には可愛い女の子たちがお茶していた。パソコンで作業しながらコーヒーを飲む男性や何か語り合ってるカップル。みんなおしゃれに見える。
出されたメニューもやたら長い名前の飲み物、食べ物。とりあえず僕は、カフェオレにしておこう…
「このカフェ、お気に入りなんだ。友達から教えてもらってさ」
「へ、へぇ」
友達もまたオシャレなんだなあ。僕のカフェオレと里山の長ったらしい名前の飲み物が運ばれてきて飲みながら色々話をする。
ゆったりした店内の空気。心地よく流れるBGM。
無言で食べる、気まずいラーメン屋なんかと全く違う。やっぱり世界が違うんだなあ…



