コンクール会場付近のベンチに座っている響と奏。
空は暗くなり、ポツリポツリと星が輝き始める。
冬の澄んだ空は、星をより美しく見せている。
「響くん、少しだけ歩かない?」
「そうだね」
奏からそう言われ響は穏やかに笑い、ゆっくりとベンチから立ち上がった。
ゆっくりと歩く響と奏。
響は空を見上げながら、はあっと白い息を吐いた。
「昔からかなちゃんのフルートの音は綺麗だったよ。そして今は何というか……カラフルになった」
「カラフル?」
奏は響の横顔を見てクスッと笑う。
「うん。深みが増した言うか……そんな感じ」
響は嬉しそうに表情を綻ばせながら奏を見る。
「そっか、ありがとう。……もしかしたら、響くんのお陰かも」
奏はふふっと笑った。
「それだったら……嬉しいな」
響は頬を染めていた。
(かなちゃんの俺の気持ちを伝えるのは……きっと今だ)
真剣な表情になる響。
「あのさ、かなちゃん……」
いざ奏に告白するとなると、少し声が震える響。
やはり緊張してしまう。
「何? 響くん」
奏はきょとんと首を傾げている。
その仕草、そして表情、奏の何もかもが可愛いと思う響だった。
「俺さ、かなちゃんのことが……好きなんだ。女の子として。ずっと前から、小さい頃から」
響は幼い頃から抱いていた奏への恋心を伝えた。
その目はどこまでも真っ直ぐだった。
胸の鼓動は、ドクンドンクと速くなっている。
「響くん……」
奏は驚きながらも表情を綻ばせる。
少しの沈黙が流れる。
響はその時間がとても長く感じた。
「私も、響くんが好き。実はね、コンクールが終わったら、響くんにこの気持ちを伝えようと思っていたの」
その答えを聞いた響は、胸の中が熱くなった。
「かなちゃん……俺、めちゃくちゃ嬉しい……! じゃあ、その……俺と付き合ってくれる?」
「うん」
奏はコクリと頷いた。
「あ、でも、響くんもうすぐ受験生だけど大丈夫なの?」
若干心配そうに首を傾げる奏。
「まあその辺は何とかするよ。勉強漬けじゃなくて息抜きも必要だし」
響は来年から高校三年生であることを思い出して苦笑した。
「図書館で一緒に勉強なら、喜んで付き合うよ」
奏はふふっと楽しそうに笑う。
「図書館デートだね」
響は照れながら笑っていた。
冬の夜空に、響と奏の嬉しそうな声は柔らかく溶け込んでいた。
♪♪♪♪♪♪♪♪
次の月曜日。
もう冬休みに入っているが、部活があるので奏は学校に向かう。
「奏、おめでとう!」
自宅の最寄り駅で彩歌と合流した際、早速そう言われた。
彩歌の表情は明るく嬉しそうだっだ。
彩歌にも、コンクールで一位になったことを伝えていた奏である。
ちなみに奏は高校入学当初から登校する時、彩歌と自宅の最寄り駅で待ち合わせをしている。
「ありがとう、彩歌」
奏は表情を綻ばせる。
そして彩歌にはコンクール結果だけでなく、他にも伝えるべきことがある奏だった。
「それとね、彩歌……私、響くん……響先輩と付き合い始めたの」
ほんのりと頬を赤く染める奏。
嬉しさと恥ずかしさが混ざっていた。
「え!? あいつと!?」
彩歌はややショックを受けた表情だ。
その時、いつもの電車が来たので奏と彩歌は乗車する。
「うん。コンクールの後、響先輩から告白されて、私も実は好きだったから。……彩歌には伝えておきたくて。もちろん、花音ちゃんにも伝えるけど」
頬を赤く染めたまま、彩歌から目をそらす奏。
改めて響を好きだと実感して奏の心はソワソワしてしまう。
「あたしの方が奏のこと大好きなのに……」
彩歌はムスッとむくれていた。
「ありがとう、彩歌。私も彩歌のこと大好きだから」
「奏!」
微笑む奏に、彩歌は抱きつく。
「奏の幸せが一番だけど、もしあいつに何かされたらあたしに言って。ぶっ飛ばすから」
「ありがとう、彩歌。その気持ちで十分だよ」
奏はクスッと笑った。
「あたしもね、奏に言おうって思ってたことがある」
奏に抱きつくのをやめ、真面目な表情になる彩歌。
「前さ、あたしの様子が変で奏は心配してくれたじゃん」
「うん」
奏はフルートコンクール予選後の学校での彩歌の様子を思い出した。
確かにあの時の彩歌は明らかに様子がおかしく、奏も心配していた。
「あたしさ、体育祭の時あの男に告白されたんだよね」
「あの男?」
「ほら……奏の彼氏と同じクラスで……トロンボーンの」
彩歌は名前を言わないが、ここまで情報を出されると奏の中で一人に絞られる。
「朝比奈先輩が」
「しかも……結構本気の告白だった……。それに、返事は今しなくて良いからって」
彩歌は頬を真っ赤に染めている。
「それで、どうしたら良いか分からなかったんだ」
奏は穏やかな表情になる。
彩歌はコクリと頷いた。
風雅とはあまり話したことはない。吹奏楽部の先輩で響の友人という認識の奏。
だが、いつからか彩歌を見る目は本気だと感じていた。
「でも、彩歌の反応からして、彩歌も朝比奈先輩のことを悪くは思っていないよね?」
奏は何となく彩歌の風雅への態度が軟化していることを感じていた。
頬を赤く染めたまま頷く彩歌。
「とりあえず、奏のコンクール結果が出たら返事するつもりだった」
「そっか。私は彩歌の選択を尊重するよ」
奏は自身より背が高い彩歌の頭を撫でた。
「彩歌ちゃん、奏ちゃん、おはよう」
高校の最寄り駅に着くと、花音が待っていた。
「おはよう、花音」
「花音ちゃん、おはよう」
奏と彩歌は少し駆け足で花音の元へ向かった。
「奏ちゃん、コンクール一位おめでとう」
「ありがとう、花音ちゃん」
花音からの祝いの言葉が聞けて、奏は嬉しくなった。
その際、響と付き合い始めたことも伝えたら、花音は素直に喜んでくれた。
「かなちゃん、おはよう。天沢さんと桜井さんも」
そこへ、偶然響が通りかかった。
奏はこの日特に響と一緒に学校へ行く約束はしていなかった。
「おはよう、響くん。あ……おはようございます、響先輩……の方が良いですか?」
若干距離感の掴み方が分からない奏である。
「うーん……部活の時は敬語、それ以外はいつも通り……かな」
響は嬉しそうな表情だった。
その様子をムスッとしながら見る彩歌と、面白そうに観察する花音である。
「あれ? みんなお揃いで。おはよう」
更に、風雅までやって来た。
奏はチラリと彩歌を見る。
彩歌は戸惑ったように風雅から目をそらしていた。
「彩歌ちゃん、ほら」
「ちょっと花音、今じゃないから」
どうやら彩歌は風雅に返事をするよう花音に言われているらしい。
「何、彩歌ちゃん、どうしたの?」
風雅はそんな彩歌に優しい表情を向ける。
「……朝からウザい」
頬を赤く染めて彩歌は風雅にそっぽを向けてしまう。
しかしその態度は更に軟化しているように奏は思えた。
「何だか賑やかだね」
「そう……ですね」
響の言葉に、奏は穏やかに笑う。
チラリと響の横顔を見ると、何だか楽しそうだった。
夢も恋も友情も、何一つ諦めたくない奏は、この時間を愛おしく思うのだった。
そしてその気持ちは響も一緒である。
二人は顔を見合わせて笑っていた。
空は暗くなり、ポツリポツリと星が輝き始める。
冬の澄んだ空は、星をより美しく見せている。
「響くん、少しだけ歩かない?」
「そうだね」
奏からそう言われ響は穏やかに笑い、ゆっくりとベンチから立ち上がった。
ゆっくりと歩く響と奏。
響は空を見上げながら、はあっと白い息を吐いた。
「昔からかなちゃんのフルートの音は綺麗だったよ。そして今は何というか……カラフルになった」
「カラフル?」
奏は響の横顔を見てクスッと笑う。
「うん。深みが増した言うか……そんな感じ」
響は嬉しそうに表情を綻ばせながら奏を見る。
「そっか、ありがとう。……もしかしたら、響くんのお陰かも」
奏はふふっと笑った。
「それだったら……嬉しいな」
響は頬を染めていた。
(かなちゃんの俺の気持ちを伝えるのは……きっと今だ)
真剣な表情になる響。
「あのさ、かなちゃん……」
いざ奏に告白するとなると、少し声が震える響。
やはり緊張してしまう。
「何? 響くん」
奏はきょとんと首を傾げている。
その仕草、そして表情、奏の何もかもが可愛いと思う響だった。
「俺さ、かなちゃんのことが……好きなんだ。女の子として。ずっと前から、小さい頃から」
響は幼い頃から抱いていた奏への恋心を伝えた。
その目はどこまでも真っ直ぐだった。
胸の鼓動は、ドクンドンクと速くなっている。
「響くん……」
奏は驚きながらも表情を綻ばせる。
少しの沈黙が流れる。
響はその時間がとても長く感じた。
「私も、響くんが好き。実はね、コンクールが終わったら、響くんにこの気持ちを伝えようと思っていたの」
その答えを聞いた響は、胸の中が熱くなった。
「かなちゃん……俺、めちゃくちゃ嬉しい……! じゃあ、その……俺と付き合ってくれる?」
「うん」
奏はコクリと頷いた。
「あ、でも、響くんもうすぐ受験生だけど大丈夫なの?」
若干心配そうに首を傾げる奏。
「まあその辺は何とかするよ。勉強漬けじゃなくて息抜きも必要だし」
響は来年から高校三年生であることを思い出して苦笑した。
「図書館で一緒に勉強なら、喜んで付き合うよ」
奏はふふっと楽しそうに笑う。
「図書館デートだね」
響は照れながら笑っていた。
冬の夜空に、響と奏の嬉しそうな声は柔らかく溶け込んでいた。
♪♪♪♪♪♪♪♪
次の月曜日。
もう冬休みに入っているが、部活があるので奏は学校に向かう。
「奏、おめでとう!」
自宅の最寄り駅で彩歌と合流した際、早速そう言われた。
彩歌の表情は明るく嬉しそうだっだ。
彩歌にも、コンクールで一位になったことを伝えていた奏である。
ちなみに奏は高校入学当初から登校する時、彩歌と自宅の最寄り駅で待ち合わせをしている。
「ありがとう、彩歌」
奏は表情を綻ばせる。
そして彩歌にはコンクール結果だけでなく、他にも伝えるべきことがある奏だった。
「それとね、彩歌……私、響くん……響先輩と付き合い始めたの」
ほんのりと頬を赤く染める奏。
嬉しさと恥ずかしさが混ざっていた。
「え!? あいつと!?」
彩歌はややショックを受けた表情だ。
その時、いつもの電車が来たので奏と彩歌は乗車する。
「うん。コンクールの後、響先輩から告白されて、私も実は好きだったから。……彩歌には伝えておきたくて。もちろん、花音ちゃんにも伝えるけど」
頬を赤く染めたまま、彩歌から目をそらす奏。
改めて響を好きだと実感して奏の心はソワソワしてしまう。
「あたしの方が奏のこと大好きなのに……」
彩歌はムスッとむくれていた。
「ありがとう、彩歌。私も彩歌のこと大好きだから」
「奏!」
微笑む奏に、彩歌は抱きつく。
「奏の幸せが一番だけど、もしあいつに何かされたらあたしに言って。ぶっ飛ばすから」
「ありがとう、彩歌。その気持ちで十分だよ」
奏はクスッと笑った。
「あたしもね、奏に言おうって思ってたことがある」
奏に抱きつくのをやめ、真面目な表情になる彩歌。
「前さ、あたしの様子が変で奏は心配してくれたじゃん」
「うん」
奏はフルートコンクール予選後の学校での彩歌の様子を思い出した。
確かにあの時の彩歌は明らかに様子がおかしく、奏も心配していた。
「あたしさ、体育祭の時あの男に告白されたんだよね」
「あの男?」
「ほら……奏の彼氏と同じクラスで……トロンボーンの」
彩歌は名前を言わないが、ここまで情報を出されると奏の中で一人に絞られる。
「朝比奈先輩が」
「しかも……結構本気の告白だった……。それに、返事は今しなくて良いからって」
彩歌は頬を真っ赤に染めている。
「それで、どうしたら良いか分からなかったんだ」
奏は穏やかな表情になる。
彩歌はコクリと頷いた。
風雅とはあまり話したことはない。吹奏楽部の先輩で響の友人という認識の奏。
だが、いつからか彩歌を見る目は本気だと感じていた。
「でも、彩歌の反応からして、彩歌も朝比奈先輩のことを悪くは思っていないよね?」
奏は何となく彩歌の風雅への態度が軟化していることを感じていた。
頬を赤く染めたまま頷く彩歌。
「とりあえず、奏のコンクール結果が出たら返事するつもりだった」
「そっか。私は彩歌の選択を尊重するよ」
奏は自身より背が高い彩歌の頭を撫でた。
「彩歌ちゃん、奏ちゃん、おはよう」
高校の最寄り駅に着くと、花音が待っていた。
「おはよう、花音」
「花音ちゃん、おはよう」
奏と彩歌は少し駆け足で花音の元へ向かった。
「奏ちゃん、コンクール一位おめでとう」
「ありがとう、花音ちゃん」
花音からの祝いの言葉が聞けて、奏は嬉しくなった。
その際、響と付き合い始めたことも伝えたら、花音は素直に喜んでくれた。
「かなちゃん、おはよう。天沢さんと桜井さんも」
そこへ、偶然響が通りかかった。
奏はこの日特に響と一緒に学校へ行く約束はしていなかった。
「おはよう、響くん。あ……おはようございます、響先輩……の方が良いですか?」
若干距離感の掴み方が分からない奏である。
「うーん……部活の時は敬語、それ以外はいつも通り……かな」
響は嬉しそうな表情だった。
その様子をムスッとしながら見る彩歌と、面白そうに観察する花音である。
「あれ? みんなお揃いで。おはよう」
更に、風雅までやって来た。
奏はチラリと彩歌を見る。
彩歌は戸惑ったように風雅から目をそらしていた。
「彩歌ちゃん、ほら」
「ちょっと花音、今じゃないから」
どうやら彩歌は風雅に返事をするよう花音に言われているらしい。
「何、彩歌ちゃん、どうしたの?」
風雅はそんな彩歌に優しい表情を向ける。
「……朝からウザい」
頬を赤く染めて彩歌は風雅にそっぽを向けてしまう。
しかしその態度は更に軟化しているように奏は思えた。
「何だか賑やかだね」
「そう……ですね」
響の言葉に、奏は穏やかに笑う。
チラリと響の横顔を見ると、何だか楽しそうだった。
夢も恋も友情も、何一つ諦めたくない奏は、この時間を愛おしく思うのだった。
そしてその気持ちは響も一緒である。
二人は顔を見合わせて笑っていた。



