「あ、あま、天川さん?!?!」
いつの間にか隣に彼女が立っていた。俺は驚きのあまり、文月に体当たりしてしまったが、二人してドミノ倒しになる事はなかった。文月の体幹が良くてよかった。
「大丈夫?」大きな目を瞬かせて僕の様子を伺う。
一瞬だけ近距離になり、僕の顔は赤くなる。懸命に「だ、大丈夫!」と平然を装う。
「姫路くん。顔が赤いけれど……」
「あ、そうかな?! 多分、教室が暑いからかなぁ〜?」
「そうかな……。ねぇ、そう言えばさっき私の誕生日のこと言ってたけれど……」
「あ、あー! そうそう。みんなの自己紹介カード見てたら、天川さんのも見えてさ……」
「な! 文月」俺は親友に話を合わせろと目配せする。
「あぁ、そうそう。そう言えば、みんなの書いたやつちゃんと見てないなーって思ってさ」
文月はなんてことない態度で話してくれた。この瞬間だけ、俺はこいつをさらに褒めようかと迷った。
天川さんもこれには納得して「そうなんだ」と頷いた。
「姫路くんは誕生日、いつなの?」
「お、俺?! 俺はその……1月3日なんだ」
「へぇ、じゃあ私とは真反対だね。私は、丁度梅雨の時期だからさ。私、冬が好きだからいいなぁ」
「そ、そうかなぁ」
やばい、マジでニヤケそう。俺、顔に出てないよな?
鏡がないから内心焦っているが、それ以上に天川さんと同じ空間で、一緒に喋っているのが途轍もなく嬉しい。
「でも、俺。家が神社でさ、初詣で来る客とかで忙しいんだよな」
「え?! 姫路くんのお家って神社なんだ!」
すごーい、という上擦った声にさらに浮つく。
「まぁ、ちっちゃいけれどちゃんとしてるぞ」
「じゃあ、来年の初詣は姫路くんの神社に行こうかな」
「え、是非是非!! 来てよ! てか、来て欲しい!」
思わずのことで本音がダダ漏れになる。気が付いた時には全てを言い切った後で、僅かに「あ……」と漏れた。
「ご、ごめん! 俺、変なこと言ってた。さっきのことは気にしないで」
「全然大丈夫だよ。てか、姫路くんについて色々知れたらから嬉しいなって」
「へぇ?!」
「だって、最初は私の話を聞くばかりで自分こと話してくれなかったじゃん? 質問とか色々乗ってくれたのは良いけれど、姫路くんのこと何も知らなかったし」
最初?
もしかして、俺が天川さんに一回目の告白した時期のことか。
俺、そんなに空振りしてたのか。くぅ、あの時の自分をぶん殴りたい。
「でも、こうして姫路くんとちゃんと会話できて安心したって思ってる」
「いや、良いんだよ! あの時の俺、めっちゃ恥ずかしい奴で黒歴史に乗るレベルだし」
そっか。俺、天川さんに聞くだけ聞いて自分の事は何も教えなかったのか。
ふと、視線をずらすとある人物の自己紹介カードに目が留まる。
「星簇くんだ……」
現在不在の彼が頭の中に過ぎる。そう言えば今日、星簇くんは教室にいないな。一限目からいないから今日は休みか。
もしかしたら、地下書庫にいるのかも。
「彼とは話すの?」
「あ、いや。最近仲良くなって、偶に話す感じだ」
「ふーん。……そっか」
「天川さん?」
何かを考え込む彼女に呼びかける。天川さんは「何でもないよ」と首を横に振る。ふわふわな髪も一緒に揺れ、そこからほのかに甘い香りが漂う。
天川さんって、香りも可愛いのか。
可愛い子って何でも可愛いな。
俺の頭の中は既に有頂天だった。
放課後になり、クラスメイトが一気に動く。俺は鞄に荷物を詰めて、教室を後にした。文月は部活で先に体育館に行った。
俺はいつも通り、地下書庫に向かう。
「星簇くーん?」
しかし、中には人の気配はなく、寧ろ電気が付いておらず利用されていないようだ。
「いない……。なんだ、学校には来てないのか」
教室にいない時は、大抵地下書庫に向かうといるんだが。
流石、神出鬼没の占い師様って所だ。今日は仕事か? それともサボり?
「しょーがない。明日、星簇くんに聞いてみるか」
俺は、照明を消して地下書庫のドアを閉めた。
⭐︎
風呂も済ませ、弟たちに「入って良いぞ」と伝える。自分の部屋に戻り、冷蔵庫から取った麦茶を飲みながらスマホを触る。
「へぇ、ネットで無料でできる診断もあるのか」
ふと、占いってネットでも出来るのかと思い、調べてみると案の定である。星簇くんが言っていた互いの誕生日を入れて相性を占うサイトもちらほら見える。
「だけど、これだけあると迷うよなぁ。できるだけ信憑性のあるやつが良いんだけれど……」
取り敢えず宣伝文に「絶対当たる! 奇跡の占い師の無料鑑定」と言う如何にも怪しそうな占いサイトに俺は足を突っ込んでいた。
だってしょうがないだろ。「絶対」って書いてあるんだもん。ちょろいとか思うなよ。
「た、試しに……天川さんとの相性を占ってみよう」
火照りが冷めた体が再度発火する。入力が次々に完了する度に、胸の鼓動が速くなるのはそれだけ占い結果が気になるからだろう。
女性占い師が「もう悩む必要はありません」のセリフとと凝った演出、次の画面には占い結果が所持されていた。
「えっと……。56%か……」
まぁ、そんなものだよなぁ。
俺は詳細を読み始めた。
【二人の相性はまずまずと言ったところです。可もなく不可もなく! これからの行動次第ですね。ですが、急接近ではなく徐々に絆を深めていくことが長い道のりであり、最短ルートになります】
「これからの行動次第か。星簇くんも同じこと言ってたな、この占い合ってるのかもな」
そこで何故か分からないが、新たな思い付きが頭の中を駆け巡る。
そう言えば星簇くんの誕生日って、8月6日だったよな。星簇くんと俺の相性ってどうなんなろう。
「別に気になってただけだし! ただ、星簇くんが俺のことをどう思ってるか知りたいだけだし!」
あれ、俺なんてこと言ってるんだ?
俺が知りたいのは天川さんなのに。
まぁいい。
ちょっと、気になっただけだから! さっさと入力して結果を見てやるぞ。
先程の映像演出をスキップせずに眺める。そして、現れた数値に俺は夜なのにも関わらず、盛大に叫んでしまった。
「ひゃ、ひゃ、100パーセントぉ?!?!」
あり得ない三桁数が出てきてひっくり返る。待て待て、俺の見間違えかもしれない。疲れてるから幻覚でも見てるのかも。
しかし、何度確認しても100という数字が画面には表示されていた。
「う、嘘だろ……?」
【二人の相性はとても抜群!! お互いのことを大切に想い合つラブラブカップルなこと間違いなし!!
もしかして二人は前世からの運命の相手なんじゃないでしょうか。もっとラブラブになる為には、素直になることです! そうすれば相手も答えてくれるでしょう!! いやーん、甘いですねー!】
「いや何が甘いんだよ!」
ネットに表示されたふざけた文章に一人ツッコミを入れた。
そもそも内容に問題がありすぎる。何だよ、前世からの運命の相手って。
しかも、素直になることが重要って何だよ!
「いやーん」とふざけた台詞が入ってる時点で他人事すぎて腹立つ。
「そんな訳ないだろ。だって、俺と星簇くんが相性抜群な訳……」
だけど、不思議と嫌悪感を抱くことはなかった。
と言うより寧ろ、嬉しい……?
「ないないない」全力で首を振り、考え丸ごと消し去ろうとする。しかし、これまでの星簇くんの言動が頭から離れられないのは事実だ。
耳元で囁いたり、膝の上に乗っかったり……。
あのイケメン顔が目の前に現れると心臓が幾つあっても足りない。
「うわー!!! 星簇くんの馬鹿野郎ー!!」
そもそも星簇くんが悪い。
星簇くんは人付き合いが苦手と言うこともあって、人との間合いが掴み取れてない。きっと、俺との距離感がバグってるのもそのせいだ。
そう、言い訳しないと今夜は眠れそうになかった。
いつの間にか隣に彼女が立っていた。俺は驚きのあまり、文月に体当たりしてしまったが、二人してドミノ倒しになる事はなかった。文月の体幹が良くてよかった。
「大丈夫?」大きな目を瞬かせて僕の様子を伺う。
一瞬だけ近距離になり、僕の顔は赤くなる。懸命に「だ、大丈夫!」と平然を装う。
「姫路くん。顔が赤いけれど……」
「あ、そうかな?! 多分、教室が暑いからかなぁ〜?」
「そうかな……。ねぇ、そう言えばさっき私の誕生日のこと言ってたけれど……」
「あ、あー! そうそう。みんなの自己紹介カード見てたら、天川さんのも見えてさ……」
「な! 文月」俺は親友に話を合わせろと目配せする。
「あぁ、そうそう。そう言えば、みんなの書いたやつちゃんと見てないなーって思ってさ」
文月はなんてことない態度で話してくれた。この瞬間だけ、俺はこいつをさらに褒めようかと迷った。
天川さんもこれには納得して「そうなんだ」と頷いた。
「姫路くんは誕生日、いつなの?」
「お、俺?! 俺はその……1月3日なんだ」
「へぇ、じゃあ私とは真反対だね。私は、丁度梅雨の時期だからさ。私、冬が好きだからいいなぁ」
「そ、そうかなぁ」
やばい、マジでニヤケそう。俺、顔に出てないよな?
鏡がないから内心焦っているが、それ以上に天川さんと同じ空間で、一緒に喋っているのが途轍もなく嬉しい。
「でも、俺。家が神社でさ、初詣で来る客とかで忙しいんだよな」
「え?! 姫路くんのお家って神社なんだ!」
すごーい、という上擦った声にさらに浮つく。
「まぁ、ちっちゃいけれどちゃんとしてるぞ」
「じゃあ、来年の初詣は姫路くんの神社に行こうかな」
「え、是非是非!! 来てよ! てか、来て欲しい!」
思わずのことで本音がダダ漏れになる。気が付いた時には全てを言い切った後で、僅かに「あ……」と漏れた。
「ご、ごめん! 俺、変なこと言ってた。さっきのことは気にしないで」
「全然大丈夫だよ。てか、姫路くんについて色々知れたらから嬉しいなって」
「へぇ?!」
「だって、最初は私の話を聞くばかりで自分こと話してくれなかったじゃん? 質問とか色々乗ってくれたのは良いけれど、姫路くんのこと何も知らなかったし」
最初?
もしかして、俺が天川さんに一回目の告白した時期のことか。
俺、そんなに空振りしてたのか。くぅ、あの時の自分をぶん殴りたい。
「でも、こうして姫路くんとちゃんと会話できて安心したって思ってる」
「いや、良いんだよ! あの時の俺、めっちゃ恥ずかしい奴で黒歴史に乗るレベルだし」
そっか。俺、天川さんに聞くだけ聞いて自分の事は何も教えなかったのか。
ふと、視線をずらすとある人物の自己紹介カードに目が留まる。
「星簇くんだ……」
現在不在の彼が頭の中に過ぎる。そう言えば今日、星簇くんは教室にいないな。一限目からいないから今日は休みか。
もしかしたら、地下書庫にいるのかも。
「彼とは話すの?」
「あ、いや。最近仲良くなって、偶に話す感じだ」
「ふーん。……そっか」
「天川さん?」
何かを考え込む彼女に呼びかける。天川さんは「何でもないよ」と首を横に振る。ふわふわな髪も一緒に揺れ、そこからほのかに甘い香りが漂う。
天川さんって、香りも可愛いのか。
可愛い子って何でも可愛いな。
俺の頭の中は既に有頂天だった。
放課後になり、クラスメイトが一気に動く。俺は鞄に荷物を詰めて、教室を後にした。文月は部活で先に体育館に行った。
俺はいつも通り、地下書庫に向かう。
「星簇くーん?」
しかし、中には人の気配はなく、寧ろ電気が付いておらず利用されていないようだ。
「いない……。なんだ、学校には来てないのか」
教室にいない時は、大抵地下書庫に向かうといるんだが。
流石、神出鬼没の占い師様って所だ。今日は仕事か? それともサボり?
「しょーがない。明日、星簇くんに聞いてみるか」
俺は、照明を消して地下書庫のドアを閉めた。
⭐︎
風呂も済ませ、弟たちに「入って良いぞ」と伝える。自分の部屋に戻り、冷蔵庫から取った麦茶を飲みながらスマホを触る。
「へぇ、ネットで無料でできる診断もあるのか」
ふと、占いってネットでも出来るのかと思い、調べてみると案の定である。星簇くんが言っていた互いの誕生日を入れて相性を占うサイトもちらほら見える。
「だけど、これだけあると迷うよなぁ。できるだけ信憑性のあるやつが良いんだけれど……」
取り敢えず宣伝文に「絶対当たる! 奇跡の占い師の無料鑑定」と言う如何にも怪しそうな占いサイトに俺は足を突っ込んでいた。
だってしょうがないだろ。「絶対」って書いてあるんだもん。ちょろいとか思うなよ。
「た、試しに……天川さんとの相性を占ってみよう」
火照りが冷めた体が再度発火する。入力が次々に完了する度に、胸の鼓動が速くなるのはそれだけ占い結果が気になるからだろう。
女性占い師が「もう悩む必要はありません」のセリフとと凝った演出、次の画面には占い結果が所持されていた。
「えっと……。56%か……」
まぁ、そんなものだよなぁ。
俺は詳細を読み始めた。
【二人の相性はまずまずと言ったところです。可もなく不可もなく! これからの行動次第ですね。ですが、急接近ではなく徐々に絆を深めていくことが長い道のりであり、最短ルートになります】
「これからの行動次第か。星簇くんも同じこと言ってたな、この占い合ってるのかもな」
そこで何故か分からないが、新たな思い付きが頭の中を駆け巡る。
そう言えば星簇くんの誕生日って、8月6日だったよな。星簇くんと俺の相性ってどうなんなろう。
「別に気になってただけだし! ただ、星簇くんが俺のことをどう思ってるか知りたいだけだし!」
あれ、俺なんてこと言ってるんだ?
俺が知りたいのは天川さんなのに。
まぁいい。
ちょっと、気になっただけだから! さっさと入力して結果を見てやるぞ。
先程の映像演出をスキップせずに眺める。そして、現れた数値に俺は夜なのにも関わらず、盛大に叫んでしまった。
「ひゃ、ひゃ、100パーセントぉ?!?!」
あり得ない三桁数が出てきてひっくり返る。待て待て、俺の見間違えかもしれない。疲れてるから幻覚でも見てるのかも。
しかし、何度確認しても100という数字が画面には表示されていた。
「う、嘘だろ……?」
【二人の相性はとても抜群!! お互いのことを大切に想い合つラブラブカップルなこと間違いなし!!
もしかして二人は前世からの運命の相手なんじゃないでしょうか。もっとラブラブになる為には、素直になることです! そうすれば相手も答えてくれるでしょう!! いやーん、甘いですねー!】
「いや何が甘いんだよ!」
ネットに表示されたふざけた文章に一人ツッコミを入れた。
そもそも内容に問題がありすぎる。何だよ、前世からの運命の相手って。
しかも、素直になることが重要って何だよ!
「いやーん」とふざけた台詞が入ってる時点で他人事すぎて腹立つ。
「そんな訳ないだろ。だって、俺と星簇くんが相性抜群な訳……」
だけど、不思議と嫌悪感を抱くことはなかった。
と言うより寧ろ、嬉しい……?
「ないないない」全力で首を振り、考え丸ごと消し去ろうとする。しかし、これまでの星簇くんの言動が頭から離れられないのは事実だ。
耳元で囁いたり、膝の上に乗っかったり……。
あのイケメン顔が目の前に現れると心臓が幾つあっても足りない。
「うわー!!! 星簇くんの馬鹿野郎ー!!」
そもそも星簇くんが悪い。
星簇くんは人付き合いが苦手と言うこともあって、人との間合いが掴み取れてない。きっと、俺との距離感がバグってるのもそのせいだ。
そう、言い訳しないと今夜は眠れそうになかった。
