星簇くんの恋愛攻略教室〜天才占い師さまは、俺にだけズルくて甘い〜

 俺と星簇くんによる「恋愛攻略教室」が始まって1週間が経つ。星簇くんは無事に文月とも仲良くなって、教室にいる時は三人で行動することが度々あった。

 ただ、星簇くんは欠席をすることが多い。不登校ではないが、教室に現れることはあまりない。しかし、地下書庫に向かうと大抵はいるのだ。

 サボりなのか仕事なのかは分からないが、成績ギリギリで繋いでるんだから凄い。学力に全振りしすぎだろ。

 俺も俺でいつの間にか、放課後は地下書庫で集合という日課になっていた。

 そして今の所、毎日天川さんに挨拶したり、たまに話したりと仲は順調に深まっている。

 やっぱり、無理に距離を縮めようとするのが良くなかったんだな。今までに告白してきた女子に申し訳なくなってくる。

 だけど、今の俺は星簇くんという最強武器(また男)を所持しているため進化真っ只中だ。もう昔の俺とは違うってみんなに証明するんだ。

「姫路くん。今日は相性占いをしてみようか」

「相性占い……?」

 地下書庫の本に手を伸ばそうとすると、不意に星簇くんが告げる。

「相性占いって何だ? タロットカードとは違うのか?」

「相性占いは、その名の通り自分と相手の相性を占うものだよ。通常の占い師でもよくやる一つでね。恋愛や友情、結婚など種類は様々なんだ」

「け、けけけ、結婚?! いや、俺まだ天川さんとお付き合いしてないし、流石に結婚は早いっていうかぁ……」 

「僕、まだ結婚占いをするとは言ってないけれど。全く、君は本当に早とちりで乙女みたいだね。想像しただけで、すぐ赤くなって。流石、「恋に恋する姫様」と言われるだけだ」

 星簇くんは俺の頬を指を指す。急いで両手で隠してキッと睨み付けた。

「だから、姫呼ばわりするなっての。しょ、しょうがないだろ。好きな人と結婚って憧れだし……」

 天川さんのウェディング姿可愛いだろうなぁ。いや、和服もありだな。可愛さに儚げがプラスされたら目の保養すぎる。
 一緒にバージンロードを渡ったり、花束を一緒に投げたり〜〜。

「って、そんなにジロジロ見るな!」

「いや、君ってグイグイ行くのに心の中は乙女だなって」

「だから、乙女じゃ……」

 ふにっ

 星簇くんの細長い人差し指が乾燥した唇に触れ、思わず肩が硬直した。

「でも、僕がいるのに他の人の話をするのは嫌だなぁ」

 星簇くんは不満げに囁いた。そんなに嫌なのかよ、他人の話をするのが。

「なんだよ。天川さんはすげー可愛いし、きっと興味が湧く筈……」

「姫路くんも可愛いよ」

「だから、俺は可愛くねーって! それより、その相性占いってどうやってやるの」

 これ以上話が脱線すると俺が恥ずかしくなるので、無理矢理仕切り直す。星簇くんが訝しげになるが、諦めてくれた。

「そうだね。やり方は様々だけれど、今回は生年月日で占ってみようか」

「た、誕生日ってことか? 俺の誕生日なら良いけれど、天川さんの誕生日なんか知らないんだけれど……」

「じゃあ、こうしよう。今から君に課題を出す。それは明日から三日間の間に、彼女の誕生日を聞くこと」

「えぇ?! そ、そんなハードル高いことさせんの?!」

「当たり前だろう。逆に知らなかったのかい?」

 星簇くんは、俺が天川さんの誕生日を知っていると思ったらしい。

「しょ、しょうがないだろ。そこまで頭が回ってなかったんだ……」

 天川さんに初めて告白するまでは、好きが兎に角勝ってアピールしまくってたからな。今思えば変人と思われても仕方がない。

「まぁ、これも話の話題になる一つの案かもね。いきなり聞くのは怪しまれるから、さり気なく聞いてみると良いよ」

「本当か?! じゃあ、明日そうして見よー!」

 明日は天川さんに挨拶して、勇気を出して誕生日がいつか聞いてみるんだ。そう胸の中に刻み、明日が楽しみだと心躍る。

「誕生日と言えばさ、星簇くんっていつなの?」

「……知りたいの?」

「ん? おう、まぁ。そんな話になったし」

 相性占いは、天川さんの誕生日を知ってからが本番だからな。もういくら話が脱線しても構わない状況だ。

「じゃあ、ここに乗って?」

「は? どこに?」

「どこって、僕の膝の上」

 星簇くんは含んだ笑みで、自身の膝をぽんぽんと軽く叩いた。星簇くんの言葉を飲み込むのにそう時間は掛からなかった。

「……はぁぁ?!」

 だとしても意味が分からなすぎるんだが?!
 別に、何でも話して良いけれどさぁ。

 ちょっと唐突すぎませんかねぇ?!


 突っ込み所満載で、俺の脳内は既にパンクしかける。そんなピンチ下でも、星簇くんは更に追い討ちをかけてきたのだ。

「僕ね、折角姫路くんと仲良くなれたからもっと絆を深めたいんだ。……ダメ?」

 イケメンの潤んだ瞳に頷きそうになる。

「そ、そんな顔されてもなぁ……! それより、こんなに密着しないで普通に会話した方がいいって」

「でも、その方が親密になれそうじゃないか」

「暴論すぎだろ」

 ダメだ我慢できなかった。いや、そう突っ込まざるを得なかった。だって星簇くんが悪いんだ。そんな心臓に悪いことを言うから。

 相手との距離を縮めるために、最初は物理的に縮めようって?

 こいつ、頭が良すぎて変なことまで考えてやがる!
 しかも、急接近は苦手じゃなかったっけ?!

「……ダメ?」

「ちょ、ちょっとだけだぞ」

 星簇くんのおねだりに見事に敗北。気が付いたら頷いていた数秒前の自分を殴りたい。
 
 本当、俺は顔面偏差値の高い奴らには甘いのかも。