次の日。
「へぇ、まさか占い師の正体が星簇くんだったなんでねぇ〜」
「文月、星簇くんのことを知ってるのか?」
俺は昨日の放課後のことを文月にすかさず話す。先程学校に来たばかりのため、文月からの返事を待ちながら教科書と筆記用具を机の中にしまう。
文月は当然だと言わんばかりに、何か思い当たる節があるようだ。
「そりゃあ知ってるさ。何せ、星簇くんは『学年一のモテ男』っていう噂だからね〜〜」
「そうなのか?!」
教科書を机の上で纏めていたものがドサっと崩れ落ちる。慌てて直すと、「そうだよ〜」という軽い返事が返ってきた。
「噂によると、もう何人ものの女子から告白されたっていう話みたいだよ。だけど、星簇くんって知っての通りあまり学校に来ないじゃん? もしかしたら、学校に来ない理由が女子がウザいからなんじゃないかって噂されてるんだよ」
「じょ、女子がウザいって?!」
何だよその贅沢な理由は!!
あーあ、俺も辛そうな雰囲気を出したいもんだよ。モテすぎて辛いから学校に行きたくないって。
「そして、ついた渾名が『魔性の男』、『神出鬼没のイケメン占い師』、『星の女神様』、エトセトラ……。とりま、幾つもの異名があるんだよね」
「幾つもって言うか持ちすぎだろ。てかなんだよ、星の『神様』なら分かるけれど『女神様』って……」
星簇くんは男だろ?
そう疑問に持つ俺の前で「ノンノン!」と指を動かして否定する文月に俺は息を殺して笑った。
一体コイツは誰の真似をしてるんだ。
「姫ちゃん、違うんだな。これが」
「おいその呼び方やめろ。姫路っていう苗字だからって何でみんな、姫呼ばわりするんだ」
「まぁまぁ、それは置いておいて……。星簇くんは言わずもがな美形で、その顔立ちは女子よりも整っている。まぁ、かっこいい系って言うよりは綺麗系って言った方が合ってるだろうね。どうやら、外国人とのハーフだっていう話だし」
ハーフか……。
その時、再び小学校の頃の記憶を思い出す。そう言えば二人で一緒に遊んでいたあの子もハーフだって言ってたな。
懐かしいなぁ。
「あれあれ、どしたの?」
「な、何でもない! ただ、初恋相手も同じハーフだったことを思い出して……」
文月には初恋相手のことを会話済みであるため、特段と気にしてはないが、やはり恥ずかしさはあった。
今の俺の顔を見て、彼がニタリと口角を上げた。
「えっとぉ、それは確か、告白しようとしたけれど結局引越しちゃって出来なくなっちゃった、『ひーちゃん』という子ですなぁ?」
「な! 馬鹿野郎、声がでかいよ!」
「でも絶好のチャンスじゃん。そんなモテ男から、恋愛のいろはを聞けるんだから、織は贅沢ものだよ」
「どーこがだよ。お前どうせ、面白がっているだけだろ?」
「あはは、バレた?」
コイツ……!
俺を揶揄いやがってー!!
「でも星簇くん、告られた人全員断ってるみたいだよね」
「え? そうなのか?」
「うん。何でも、ずっと前から好きな人がいるんだって。その噂が広まった時のあの女子たちの顔!! あれは、犯人を突き止めてとっちめてやろうという顔してたよ」
「おっそろしいな」
俺の言葉に何度も頷き、俺も釣られて首を上下に振る。
とは言え、星簇くんの好きな人って一体誰なんだろう。ずっと前から好きってことは相当一途ってことだよな。
ま、いっか。
俺には関係のないことだし。
「さぁて織。今日、その話の中心人物である星簇くんは教室に来るか賭けをしよう」
「え? 来るんじゃないのか? 俺、今日の放課後に地下書庫で会うつもりだぞ?」
昨日の放課後に互いに自己紹介した後、「明日会おう」と快く引き受けてくれた彼を思い出す。
しかし、そこでもと文月が付け加える。
「いやいや、教室に毎回居たら女子の大群に巻き込まれるのが目に見えてるから彼は成績ギリギリのラインを攻めてるんだよ」
「教室に毎回居たらって、授業がある時は行くのが正しいのにそれをあたかも間違いって……」
本当、文月は楽観的だよなー。
「取り敢えず、俺は来るに千円賭けようかな」
「俺はやらないからな」
「えぇ〜〜。姫ちゃんの意地悪っ」
「おい、姫ちゃん呼びやめろ!」
しかし文月の予想が外れ、結局星簇くんは帰りの会になっても教室に現れることはなかった。
⭐︎⭐︎⭐︎
放課後になり、俺は颯爽と地下書庫へと向かう。古い階段を降りると、その先には案の定星簇くんがいた。
彼は何やら分厚い本を読み漁って真剣な表情をしている。
ギシっ
「やべっ」
うっかり軋む段を思い切り踏んだ事で、星簇くんはその本を閉じた。途端に爽やかな笑みをこちらに向けてくる。
「やぁ、姫路くん。こんにちは、昨日ぶりだね」
「やっぱりここに居た……」
俺はほっと肩を落とし、近くの本棚付近に荷物を置く。
「今日、教室に居なかったよな?」
「あぁ、今日は少し用事があってね」
「……占いの仕事?」
だって占い師やってるんだったら、他の客の相談も受けてるんだろうし。
そんな淡い考えで呟くと、「うん、まぁね」と返ってくる。
やっぱり、星簇くんがあまり学校に来ないのは本当だったんだな。前までは入院でもしてると思ってたから、そこまで気にしてなかったんだが。
「なぁ、星簇くん! 今日から占ってくれるんだよな?」
「うん。君との約束を忘れる訳がないだろ?」
当然だと頷く星簇くんに俺はまた安堵する。
こいつは、ふらっと「さぁ? そんなこと約束したっけ?」とはぐらかしてきそうだからな。
俺の脳内でのイメージで、星簇くんが綺麗な顔して惚ける姿が思い浮かんだ。
「姫路くん。じゃあ、席に座ってくれる?」
「おう! 分かった」
快い返事に星簇くんは微笑む。
くそ、相変わらずのご尊顔だな。これは女子たちが夢中になっちゃうのも分かる。だか、それが凄く悔しい。
……天川さんも、こいつの笑顔見たらきっとイチコロだろーな。
「ほら、何を考えてるんだい?」
突然鼻を摘まれ、「んぐ」と思いきり鼻呼吸をする。
「な、何すんだよ!」
「姫路くんが僕を見ないから意地悪をしたんだよ」
「ぼ、僕を見ないからって……。ちょっと考え事をしてたんだよ! それより、早く始めよーぜ」
星簇くんは割とお喋りなのか俺を揶揄うのが好きらしい。そうこうしている内に、話が脱線しそうなので俺が無理矢理線路に戻す。
「……ふぅん。まぁ、いいか。じゃあ、始めようか」
星簇くんは何かを考え込んだが、俺の話に合わせるようだ。
こうして、「恋愛攻略教室(仮名)」が始まった訳である。
「まず始めにだけど、この恋がどんな展開を迎えるのか占わせてもらっても良いかな」
「良いぜ良いぜ! 逆に俺も知りたい!」
結果がどうであれ、良い方向に行くかどうか知りたいし。
星簇くんは鞄の中からカードケースを取り出す。中からは、あまり見たことのない絵柄のカードが見えた。
「これは何だ? トランプじゃないよな」
「へぇ、まさか占い師の正体が星簇くんだったなんでねぇ〜」
「文月、星簇くんのことを知ってるのか?」
俺は昨日の放課後のことを文月にすかさず話す。先程学校に来たばかりのため、文月からの返事を待ちながら教科書と筆記用具を机の中にしまう。
文月は当然だと言わんばかりに、何か思い当たる節があるようだ。
「そりゃあ知ってるさ。何せ、星簇くんは『学年一のモテ男』っていう噂だからね〜〜」
「そうなのか?!」
教科書を机の上で纏めていたものがドサっと崩れ落ちる。慌てて直すと、「そうだよ〜」という軽い返事が返ってきた。
「噂によると、もう何人ものの女子から告白されたっていう話みたいだよ。だけど、星簇くんって知っての通りあまり学校に来ないじゃん? もしかしたら、学校に来ない理由が女子がウザいからなんじゃないかって噂されてるんだよ」
「じょ、女子がウザいって?!」
何だよその贅沢な理由は!!
あーあ、俺も辛そうな雰囲気を出したいもんだよ。モテすぎて辛いから学校に行きたくないって。
「そして、ついた渾名が『魔性の男』、『神出鬼没のイケメン占い師』、『星の女神様』、エトセトラ……。とりま、幾つもの異名があるんだよね」
「幾つもって言うか持ちすぎだろ。てかなんだよ、星の『神様』なら分かるけれど『女神様』って……」
星簇くんは男だろ?
そう疑問に持つ俺の前で「ノンノン!」と指を動かして否定する文月に俺は息を殺して笑った。
一体コイツは誰の真似をしてるんだ。
「姫ちゃん、違うんだな。これが」
「おいその呼び方やめろ。姫路っていう苗字だからって何でみんな、姫呼ばわりするんだ」
「まぁまぁ、それは置いておいて……。星簇くんは言わずもがな美形で、その顔立ちは女子よりも整っている。まぁ、かっこいい系って言うよりは綺麗系って言った方が合ってるだろうね。どうやら、外国人とのハーフだっていう話だし」
ハーフか……。
その時、再び小学校の頃の記憶を思い出す。そう言えば二人で一緒に遊んでいたあの子もハーフだって言ってたな。
懐かしいなぁ。
「あれあれ、どしたの?」
「な、何でもない! ただ、初恋相手も同じハーフだったことを思い出して……」
文月には初恋相手のことを会話済みであるため、特段と気にしてはないが、やはり恥ずかしさはあった。
今の俺の顔を見て、彼がニタリと口角を上げた。
「えっとぉ、それは確か、告白しようとしたけれど結局引越しちゃって出来なくなっちゃった、『ひーちゃん』という子ですなぁ?」
「な! 馬鹿野郎、声がでかいよ!」
「でも絶好のチャンスじゃん。そんなモテ男から、恋愛のいろはを聞けるんだから、織は贅沢ものだよ」
「どーこがだよ。お前どうせ、面白がっているだけだろ?」
「あはは、バレた?」
コイツ……!
俺を揶揄いやがってー!!
「でも星簇くん、告られた人全員断ってるみたいだよね」
「え? そうなのか?」
「うん。何でも、ずっと前から好きな人がいるんだって。その噂が広まった時のあの女子たちの顔!! あれは、犯人を突き止めてとっちめてやろうという顔してたよ」
「おっそろしいな」
俺の言葉に何度も頷き、俺も釣られて首を上下に振る。
とは言え、星簇くんの好きな人って一体誰なんだろう。ずっと前から好きってことは相当一途ってことだよな。
ま、いっか。
俺には関係のないことだし。
「さぁて織。今日、その話の中心人物である星簇くんは教室に来るか賭けをしよう」
「え? 来るんじゃないのか? 俺、今日の放課後に地下書庫で会うつもりだぞ?」
昨日の放課後に互いに自己紹介した後、「明日会おう」と快く引き受けてくれた彼を思い出す。
しかし、そこでもと文月が付け加える。
「いやいや、教室に毎回居たら女子の大群に巻き込まれるのが目に見えてるから彼は成績ギリギリのラインを攻めてるんだよ」
「教室に毎回居たらって、授業がある時は行くのが正しいのにそれをあたかも間違いって……」
本当、文月は楽観的だよなー。
「取り敢えず、俺は来るに千円賭けようかな」
「俺はやらないからな」
「えぇ〜〜。姫ちゃんの意地悪っ」
「おい、姫ちゃん呼びやめろ!」
しかし文月の予想が外れ、結局星簇くんは帰りの会になっても教室に現れることはなかった。
⭐︎⭐︎⭐︎
放課後になり、俺は颯爽と地下書庫へと向かう。古い階段を降りると、その先には案の定星簇くんがいた。
彼は何やら分厚い本を読み漁って真剣な表情をしている。
ギシっ
「やべっ」
うっかり軋む段を思い切り踏んだ事で、星簇くんはその本を閉じた。途端に爽やかな笑みをこちらに向けてくる。
「やぁ、姫路くん。こんにちは、昨日ぶりだね」
「やっぱりここに居た……」
俺はほっと肩を落とし、近くの本棚付近に荷物を置く。
「今日、教室に居なかったよな?」
「あぁ、今日は少し用事があってね」
「……占いの仕事?」
だって占い師やってるんだったら、他の客の相談も受けてるんだろうし。
そんな淡い考えで呟くと、「うん、まぁね」と返ってくる。
やっぱり、星簇くんがあまり学校に来ないのは本当だったんだな。前までは入院でもしてると思ってたから、そこまで気にしてなかったんだが。
「なぁ、星簇くん! 今日から占ってくれるんだよな?」
「うん。君との約束を忘れる訳がないだろ?」
当然だと頷く星簇くんに俺はまた安堵する。
こいつは、ふらっと「さぁ? そんなこと約束したっけ?」とはぐらかしてきそうだからな。
俺の脳内でのイメージで、星簇くんが綺麗な顔して惚ける姿が思い浮かんだ。
「姫路くん。じゃあ、席に座ってくれる?」
「おう! 分かった」
快い返事に星簇くんは微笑む。
くそ、相変わらずのご尊顔だな。これは女子たちが夢中になっちゃうのも分かる。だか、それが凄く悔しい。
……天川さんも、こいつの笑顔見たらきっとイチコロだろーな。
「ほら、何を考えてるんだい?」
突然鼻を摘まれ、「んぐ」と思いきり鼻呼吸をする。
「な、何すんだよ!」
「姫路くんが僕を見ないから意地悪をしたんだよ」
「ぼ、僕を見ないからって……。ちょっと考え事をしてたんだよ! それより、早く始めよーぜ」
星簇くんは割とお喋りなのか俺を揶揄うのが好きらしい。そうこうしている内に、話が脱線しそうなので俺が無理矢理線路に戻す。
「……ふぅん。まぁ、いいか。じゃあ、始めようか」
星簇くんは何かを考え込んだが、俺の話に合わせるようだ。
こうして、「恋愛攻略教室(仮名)」が始まった訳である。
「まず始めにだけど、この恋がどんな展開を迎えるのか占わせてもらっても良いかな」
「良いぜ良いぜ! 逆に俺も知りたい!」
結果がどうであれ、良い方向に行くかどうか知りたいし。
星簇くんは鞄の中からカードケースを取り出す。中からは、あまり見たことのない絵柄のカードが見えた。
「これは何だ? トランプじゃないよな」
