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その日の放課後。
『その占い師は、図書室の地下書庫を拠点として活動しているらしい』
「本当にこんな所にいるのかよ……」
図書室の先生に地下書庫の使用許可を貰い、薄暗い空間の中、慎重に階段を降りる。
手入れはされているが高い壁までは清掃が行き通っておらず、蜘蛛の巣がちらほら貼っている。そのせいか埃臭く思わず鼻を抑えた。
「ありゃ、誰もいない。もしかして早く来すぎたか?」
「いや、そんなことはないね」
「うわぁぁぁぁ!! お化けぇぇぇぇぇ!!」
突如後ろから新たな声が聞こえ、その反動で悲鳴を上げる。ガタンと転げ、目の前の本棚にぶつかりそうになるも危機一髪のところで止まった。
何故なら声の主が俺の前にまで立って防いでくれたからだ。
「おっと」
抱きつく形になってしまい、俺は瞬時に離れる。
「悪い! 突然後ろから声がしたからびっくりして……」
喋る口が止まる。
なぜなら、目の前の人間の容姿が絶世の美男子だったからだ。
日本人じゃ考えられない白銀の髪に、筋の通った鼻と綺麗な二重の目。そして、彼はモノクルを掛けており知的なイメージが生まれた。
長い睫毛に隠された瞳が俺を見つめており、何故か分からないが胸がドクンと脈打った。
「どうしたのかな? そんなに固まって」
「あ、ご、ごめん! お、思わず初恋の相手に似ていて……」
「初恋の相手?」
「初恋の相手が、白髪のやつだったからさ。小学校が違かったんだけれど、よく公園で一緒に遊んだんだ。だけど、その人は遠くの方に引っ越しちゃうって言ってそれっきり会ってなくて……」
「そう」
美男子その話を聞いて深く何かを考え込んでしまった。
って、何俺は初対面の相手に初恋のことを話してるんだ馬鹿野郎!
「そ、それより、お前が、学校で噂の占い師なのか?!」
「おや。もう随分そこまで広まっているんだ」彼は目を丸くしてモノクルのブリッジ部分をクイっと上げる。
「そうだよ。確かに僕の父と母は占い師をしていて、僕もその家業を継いでいる」
否定しないってことは占い師がいるってことは本当だったのか。どうしよう、後で文月にお礼しないと。
「あそこの水晶玉とかもお前のものなの?」
「そうだよ。たまに、お客さんがやって来て占ったりするんだ」
「占い?! マジで?!」
目を輝かせて言い詰める俺に、彼は「近い」と制するも、改めてと気前よく紹介してみせた。
「占いの館にようこそ、姫路織くん」
「てか、何でお前。俺の名前知ってるの?」
「僕たち、こう見えて同じクラスなんだよね」
「同じクラス?」
こんな綺麗な人、同じクラスに居たか?
女子で可愛い人は何人もいるが、男子ではイメージがないな。
「初めまして。僕の名前は、星簇彦史郎。どうぞよろしくね」
「星簇彦史郎……。あ! お前、出席ギリギリの癖に、学力成績がいつも一位の奴!」
思い出した!!
あまり出席しないから顔も覚えてなかった。まさか、成績優秀な奴が占い師なんてやってたなんて。
「出席ギリギリ……。もう少しマシな覚え方はないのかい? まぁ、あながち間違ってはないか」
星簇くんは溜息を吐いたが、すぐに済ました顔に戻る。
「所で姫路くん。ここに用があるってことは、君は少なからず悩みを持っていると言うことだろう?」
「な、どうしてそれを……!」
「顔に書いてあるからだよ」
顔?
手で顔を触る。
しかし、それで分かるわけもなくスマホのカメラ機能で確認しようとした。
俺の動きが可笑しかったのか、星簇くんは口元を抑えて笑い出した。
「冗談だよ。あくまでも比喩表現さ、まさか間に受ける人がいるんだなんて」
「ちょっと、マジで信じちゃったじゃんか!」
「本当に顔に書いてある訳がないだろう? なら、今すぐ油性ペンで大きく書いてあげようか?」
「おいこら、やめろ!」
本当に書くやつがどこに居るんだよ!
星簇くんがペンを持って書く素振りを見せる。俺は一所懸命の抵抗を見せて、事なき終えた。
一時的な攻防戦が終わる中で、星簇くんは「さぁ座って」と目の前の椅子を示した。
鞄を床に置き、星簇くんが向かい側に座るのを待つ。
うわ、マジで相談するってなると緊張するな。
「それで、本題に入ろうか。今回はどんなお悩みでここに来たのかな?」
「俺、同じクラスの天川さんが好きなんだ。でも、告白したんだけれど、振られちゃって……」
「ふーん。それで?」
「だけど俺諦められなくて……そしたら、友達が星簇くんの話をしてくれて、ここに来たんだ」
「成る程ね。要するに、君は恋のお悩み相談ってことか。うん、いいよ」
「本当か?!」
「恋愛占いなら経験あるから大丈夫。さてと、対価はどうしよう」
「対価ぁ? え、金取るの?!」
マジかよ、無償じゃないのか。
顔を青ざめる俺の傍で、当然だと腰を手に当てる。
「当たり前じゃないか。これは遊びではなく商売だ。僕も君に協力するから、君も相応のお返しをしなければならない。取引っていうものは大体がそうだよ」
「うぅ……俺のお小遣いがぁ」
「なんてね。冗談さ」
「何だよ、冗談かよー!」
俺は星簇くんの肩を叩くフリをする。
コイツ、さては人を揶揄うのが好きだな?
「だけど対価のようなものは貰おう。そうだなぁ、じゃあ、君について教えてほしいな」
「俺について?」
何だ、そんなことで良いのか。
てか逆にそんなことで良いのか?
後からやっぱり金を取るとか言い出さないよな?
怪しさ満点と見つめていると「そんなに見つめられると照れるなぁ」と冗談混じりに言われた。
「僕は、君が天川さんとお近付きになれるように攻略方法を教えよう。その代わり姫路くんは、僕に君のことを色々教える。うん、それが良い。決定だ」
「名付けて、『恋愛攻略教室』さ」星簇くんは、綺麗なウィンクと共に指パッチンをかます。
あまりにも綺麗で見惚れてしまう。このままではいけないと意識を無理やり起こさせ、俺は思っていた疑問をぶつける。
「でも何で俺についてなんか……」
「何でって、理由がなくちゃ駄目かい?」
「いや、別にそんな訳じゃ……」
「まぁ確かに気にならなくもないか。うーん、そうだね。強いて言うなら……」
突然、俺の目の前に影がさす。見上げると星簇くんがこちらに来ていた。倣って立ち上がり、何をされるのかと待つ。
そして、星簇くんが前に倒れてくる。
「ちょ、ちょっとおい!」俺は何が起こったのか分からず、星簇くんの肩を叩く。しかし、星簇くんの方が明らかに身長が高く押してもビクともしない。
もしかして死んだか?
と巫山戯たことを考えていると耳元に吐息が触れた。情けない声と共に星簇くんは続ける。
「同じクラスの人として仲良くしたいだけだよ」
星簇くんはそう言うだけ言って、俺から離れる。未だ耳元の温もりが解けず、身を固まらせる。
やがて、頭上で「へぇ」という含み笑いが聞こえた。
「姫路くん、耳が弱いんだ」
「ばっか、そんなことされたら誰だってこんな声出すだろ!」
「ふふ」
「おい! 笑うなー!」
恥ずかしくなり、思わず星簇くんに叫ぶ。そんなこんなで、俺と星簇くんの恋愛攻略教室に幕が上がったのは言うまでもない。
その日の放課後。
『その占い師は、図書室の地下書庫を拠点として活動しているらしい』
「本当にこんな所にいるのかよ……」
図書室の先生に地下書庫の使用許可を貰い、薄暗い空間の中、慎重に階段を降りる。
手入れはされているが高い壁までは清掃が行き通っておらず、蜘蛛の巣がちらほら貼っている。そのせいか埃臭く思わず鼻を抑えた。
「ありゃ、誰もいない。もしかして早く来すぎたか?」
「いや、そんなことはないね」
「うわぁぁぁぁ!! お化けぇぇぇぇぇ!!」
突如後ろから新たな声が聞こえ、その反動で悲鳴を上げる。ガタンと転げ、目の前の本棚にぶつかりそうになるも危機一髪のところで止まった。
何故なら声の主が俺の前にまで立って防いでくれたからだ。
「おっと」
抱きつく形になってしまい、俺は瞬時に離れる。
「悪い! 突然後ろから声がしたからびっくりして……」
喋る口が止まる。
なぜなら、目の前の人間の容姿が絶世の美男子だったからだ。
日本人じゃ考えられない白銀の髪に、筋の通った鼻と綺麗な二重の目。そして、彼はモノクルを掛けており知的なイメージが生まれた。
長い睫毛に隠された瞳が俺を見つめており、何故か分からないが胸がドクンと脈打った。
「どうしたのかな? そんなに固まって」
「あ、ご、ごめん! お、思わず初恋の相手に似ていて……」
「初恋の相手?」
「初恋の相手が、白髪のやつだったからさ。小学校が違かったんだけれど、よく公園で一緒に遊んだんだ。だけど、その人は遠くの方に引っ越しちゃうって言ってそれっきり会ってなくて……」
「そう」
美男子その話を聞いて深く何かを考え込んでしまった。
って、何俺は初対面の相手に初恋のことを話してるんだ馬鹿野郎!
「そ、それより、お前が、学校で噂の占い師なのか?!」
「おや。もう随分そこまで広まっているんだ」彼は目を丸くしてモノクルのブリッジ部分をクイっと上げる。
「そうだよ。確かに僕の父と母は占い師をしていて、僕もその家業を継いでいる」
否定しないってことは占い師がいるってことは本当だったのか。どうしよう、後で文月にお礼しないと。
「あそこの水晶玉とかもお前のものなの?」
「そうだよ。たまに、お客さんがやって来て占ったりするんだ」
「占い?! マジで?!」
目を輝かせて言い詰める俺に、彼は「近い」と制するも、改めてと気前よく紹介してみせた。
「占いの館にようこそ、姫路織くん」
「てか、何でお前。俺の名前知ってるの?」
「僕たち、こう見えて同じクラスなんだよね」
「同じクラス?」
こんな綺麗な人、同じクラスに居たか?
女子で可愛い人は何人もいるが、男子ではイメージがないな。
「初めまして。僕の名前は、星簇彦史郎。どうぞよろしくね」
「星簇彦史郎……。あ! お前、出席ギリギリの癖に、学力成績がいつも一位の奴!」
思い出した!!
あまり出席しないから顔も覚えてなかった。まさか、成績優秀な奴が占い師なんてやってたなんて。
「出席ギリギリ……。もう少しマシな覚え方はないのかい? まぁ、あながち間違ってはないか」
星簇くんは溜息を吐いたが、すぐに済ました顔に戻る。
「所で姫路くん。ここに用があるってことは、君は少なからず悩みを持っていると言うことだろう?」
「な、どうしてそれを……!」
「顔に書いてあるからだよ」
顔?
手で顔を触る。
しかし、それで分かるわけもなくスマホのカメラ機能で確認しようとした。
俺の動きが可笑しかったのか、星簇くんは口元を抑えて笑い出した。
「冗談だよ。あくまでも比喩表現さ、まさか間に受ける人がいるんだなんて」
「ちょっと、マジで信じちゃったじゃんか!」
「本当に顔に書いてある訳がないだろう? なら、今すぐ油性ペンで大きく書いてあげようか?」
「おいこら、やめろ!」
本当に書くやつがどこに居るんだよ!
星簇くんがペンを持って書く素振りを見せる。俺は一所懸命の抵抗を見せて、事なき終えた。
一時的な攻防戦が終わる中で、星簇くんは「さぁ座って」と目の前の椅子を示した。
鞄を床に置き、星簇くんが向かい側に座るのを待つ。
うわ、マジで相談するってなると緊張するな。
「それで、本題に入ろうか。今回はどんなお悩みでここに来たのかな?」
「俺、同じクラスの天川さんが好きなんだ。でも、告白したんだけれど、振られちゃって……」
「ふーん。それで?」
「だけど俺諦められなくて……そしたら、友達が星簇くんの話をしてくれて、ここに来たんだ」
「成る程ね。要するに、君は恋のお悩み相談ってことか。うん、いいよ」
「本当か?!」
「恋愛占いなら経験あるから大丈夫。さてと、対価はどうしよう」
「対価ぁ? え、金取るの?!」
マジかよ、無償じゃないのか。
顔を青ざめる俺の傍で、当然だと腰を手に当てる。
「当たり前じゃないか。これは遊びではなく商売だ。僕も君に協力するから、君も相応のお返しをしなければならない。取引っていうものは大体がそうだよ」
「うぅ……俺のお小遣いがぁ」
「なんてね。冗談さ」
「何だよ、冗談かよー!」
俺は星簇くんの肩を叩くフリをする。
コイツ、さては人を揶揄うのが好きだな?
「だけど対価のようなものは貰おう。そうだなぁ、じゃあ、君について教えてほしいな」
「俺について?」
何だ、そんなことで良いのか。
てか逆にそんなことで良いのか?
後からやっぱり金を取るとか言い出さないよな?
怪しさ満点と見つめていると「そんなに見つめられると照れるなぁ」と冗談混じりに言われた。
「僕は、君が天川さんとお近付きになれるように攻略方法を教えよう。その代わり姫路くんは、僕に君のことを色々教える。うん、それが良い。決定だ」
「名付けて、『恋愛攻略教室』さ」星簇くんは、綺麗なウィンクと共に指パッチンをかます。
あまりにも綺麗で見惚れてしまう。このままではいけないと意識を無理やり起こさせ、俺は思っていた疑問をぶつける。
「でも何で俺についてなんか……」
「何でって、理由がなくちゃ駄目かい?」
「いや、別にそんな訳じゃ……」
「まぁ確かに気にならなくもないか。うーん、そうだね。強いて言うなら……」
突然、俺の目の前に影がさす。見上げると星簇くんがこちらに来ていた。倣って立ち上がり、何をされるのかと待つ。
そして、星簇くんが前に倒れてくる。
「ちょ、ちょっとおい!」俺は何が起こったのか分からず、星簇くんの肩を叩く。しかし、星簇くんの方が明らかに身長が高く押してもビクともしない。
もしかして死んだか?
と巫山戯たことを考えていると耳元に吐息が触れた。情けない声と共に星簇くんは続ける。
「同じクラスの人として仲良くしたいだけだよ」
星簇くんはそう言うだけ言って、俺から離れる。未だ耳元の温もりが解けず、身を固まらせる。
やがて、頭上で「へぇ」という含み笑いが聞こえた。
「姫路くん、耳が弱いんだ」
「ばっか、そんなことされたら誰だってこんな声出すだろ!」
「ふふ」
「おい! 笑うなー!」
恥ずかしくなり、思わず星簇くんに叫ぶ。そんなこんなで、俺と星簇くんの恋愛攻略教室に幕が上がったのは言うまでもない。
