星簇くんの恋愛攻略教室〜天才占い師さまは、俺にだけズルくて甘い〜

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 次の日の放課後。今日も星簇くんは教室に来なかった。もうすぐ、約束していた三日目になる。昨日の相性占いのことがあって、妙な胸騒ぎが収まらない。

 地下書庫にはいるかと訪ねると、扉の隙間から電気が漏れていた。安堵して開けると、そこには星簇くんが本を読んで寛いでいた。

 相変わらずのマイペースさに苦笑しそうになる。俺の足音に気付いた彼が本をパタンと閉じた。

「やぁ、姫路くん。こんにちは」

「おう……。お前、本当に授業単位は大丈夫なのか?」

「心配してくれてるの? それは嬉しいなぁ。でも大丈夫だよ、僕も考えて授業には行ってるからね」

 学校行ってないのに本当に学力成績は学年一位なんだよな。

「それで、彼女の誕生日を知ることができたの?」

「おうおう! 良くぞ聞いてくれました。天川さんの誕生日、無事に知れました!!」

 星簇くんに情報を自信満々に伝える。星簇くんは詳しいことを追求することはなくただ、首を上下に振った。

 だが、次に発された彼の言葉で自信も喪失してしまった。

「それで、どうやって知ったの?」

「えっ?! えっとぉ……その……」

「ちゃんと本人には聞いたのかい?」

「ほ、本人? 本人にはまぁ、聞いたよ?」

 星簇くんの真っ直ぐな眼差しが顔面に突き刺さる。俺は逃げるように視線を逸らし、態とらしく口笛を吹いた。

「姫路くん、本当は?」

「教室の掲示板に自己紹介カードが貼ってあるだろ? それで知った」

「はぁ、そう言うことだと思った」

 どこかホッとした心情に俺は唇を尖らせる。

「何がそう言うことだよ、だって直接聞くのはハードルが高いし。何より天川さんに変に思われるだろ?」

 それに、天川さんとは誕生日関連で話が広がったんだ。文句は言わなくても良いだろ。
 不満が募る中、星簇くんはそれを一蹴する程の深いため息を吐き出したのだ。

「僕は勇気を出して言ったし、ちゃんと聞いたのに……」

「は?」

「ううん、何でもない。とまぁ、情報は得られたしさっさと占っちゃおうか」

「席に座って」星簇くんは目の前の椅子を示す。椅子に腰掛け、占い結果を待つ。
 星簇くんは紙とペンを取り出して何やら数字を書き始めた。

「なぁ、何の占いなんだ?」

「数秘術って言ってね。まぁ、手軽にできる占いの一つでもあるんだけれど。それを使って、姫路くんの運命数と彼女の運命数を照らし合わせるんだ」

「う、運命数……?」

「簡単に言うと人がこの世に生まれた時に与えられる数字のことで、その人が生まれた意味とその生き方を表すんだ」

 生まれた時に与えられる数字……。そんなものがあるのか。

「姫路くんは、2010年の1月3日だよね。君の運命数は七、相手は三か……。よし、出来たよ」

「どうだ?! どんな感じなんだ?!」

 結果が待ち切れず、前のめりで問い出す。星簇くんは宥めることなく淡々と告げる。

「うん。相性のパーセントで言うと75%だ。まぁまぁな感じって所かな。これからと言う点でもある」

「本当か?! やったぁ!」

 地下書庫だと言うことも忘れて高く飛び上がった。星簇くんは呆れた目でこちらを見つめていたがそんなの気にしない。

「やっぱり、そうは上手くいかないか」

 星簇くんは何故か惜しそうにしていた。

「まだまだ伸び代がある……。星簇くんの占いでも同じこと言ってたな」

「僕の占いで"も"? それ、どう言う意味?」

「あ」

 束の間に漏れた言葉が更に星簇くんを不機嫌にさせる。眉を顰めて口を噤んでいた。ガタンと立ち上がって、俺の所に迫り来る。

 やっべ。

 俺は急いで立ち上がり、本棚に向かって逃げる。星簇くんのイケメン顔は今じゃ般若だ。両手で近づくなと意思表明させる。

「待て待て!! そんな怖い顔するなよ! いや、そんな怒った顔も素敵って言うかぁ……」

「ふふ、君は僕を煽るのが得意だね」

 ご立腹じゃねーか。

「そんなの得意じゃねーし!! って近い近い!!」

 星簇くんとの距離は僅か数十センチとまで縮まる。顔のいい奴に迫られるとどうしても照れてしまう悪い癖が出る。
 ちらりと覗くと、星簇くんが鋭い目つきで睨んできた。美人の睨み程の恐ろしいものはないな。

 絶体絶命の状態でも余計なことを考えている俺がアホらしい。だけど、星簇くんは俺の様子を素早く指摘した。

「へぇ、よそ見する余裕があるんだ」

「頼む、悪かったってば! マジで命だけは勘弁して」

「君の言い分によって変わるかな」

 不気味に笑う彼が今では悪魔としか思えない。いつの間にか顔を上げると目の前には彼が居る。俺が身を捩らせればキスが出来てしまいそうだ。
 
 横に移動しようとしたが、星簇くんの手に乗って遮られる。

 これ、所謂壁ドンじゃね……?!

「ねぇ、どう言うこと?」

「あ、いや……そのですね」

 地下書庫では個人的な尋問が始まろうとしていた。俺は言葉を詰まらせることしか出来ず、迫り来る彼を耐えるばかりだ。
 これ以上の刺激は耐えられず、仕方なく俺は白状した。

「ね、ネットで無料で占ってくれるサイトがあったんだよ。それで試しに調べたんだ。そしたら、お前と似たような結果だったから……」

「へぇ……」

「それで……」

「それで? まだ何か隠してるの?」

 これ、言うべきなんだろうか。

「今日の姫路くんはどこか余所余所しいね。何かあったの? 悩みなら聞いてあげるよ、それとも僕にも言えないこと?」

「ほ、星簇くんと俺の相性も占ったんだ!」

「……へ?」

「べ、別に変な意味はない! ただ、ちょっと気になっただけで……」

 てか、何でこんな事を言うだけで恥ずかしくなってるんだ。

 それもこれも、距離感の可笑しいこいつのせいだ!!

「星簇くん?」

 星簇くんの反応が一向に返ってこない。心配した俺は見上げる。ぱちりと睫毛の長い瞳に捉えられる。
 先程の形相とは打って変わり、星簇くんは妖艶染みた表情を浮かべていた。口角を上げてにこりと微笑み、耳元で囁いた。

「ねぇ、それ凄く可愛い」

「馬鹿野郎! 顔が近い、耳元で言うな!」

「それで、結果はどうだったの?」

「け、結果はその……!」

 別の意味で迫り来る顔に俺は恥ずかしさで死にそうになった。このままじゃキスされてしまうんじゃないか。

 俺と星簇くんの距離が僅か数センチになった時だ。

「彦〜〜?」

 誰かが地下書庫に現れたのだ。俺は咄嗟に星簇くんを突き飛ばし、何事もなかったようにその場で佇む。

 しかし、その姿を見て俺は驚愕せざるを得なかった。

「あ、天川さん?!?!」

「あれ、姫路くんだ。どうしてこんな所に?」

「い、いやその……」

「ちょっと、彦! また先生が言ってたよ。サボるのも大概にしろって」

 え、彦?
 彦って誰のことだ?

 頭の中が途端にハテナでいっぱいになる。星簇くんが罰悪そうに「困ったなぁ」とぼやいた。

「全く、あの先生しつこいなぁ。別に学力にはなんの問題もないじゃないか。てか、美波さんもいちいち言わなくていいんだよ?」

 み、美波さん??

「でも、いざとなった時に休めなくなったら大変だよ? 彦の学力なら大丈夫だけれど、進級できなくなったらどうするのよ」

 流暢に会話を繰り広げる二人に俺は目が点になった。

 そう言えば星簇くんの下の名前って、星簇彦史郎くんって言うんだっけ。
 だから、彦って呼ばれているのか。

 てか、困った顔の天川さんもとても可愛い。
 って、そうじゃなくて!

「ふ、二人ともって……一体どんな関係なの?」

 嫌な予感がした俺は自らダメージを喰らいに行く。俺の騒つく心を他所に、天川さんからの快い返事が返ってきた。
 
「そう言えば言ってなかったっけ。私と彦、中学校からの同級生なの」

 は。

「ええええええ?!?!」