日が沈み始め、辺りは暗くなる。
道行く人は皆、黒い影になって見分けがつかない。
「あの人は誰？」
そんな声がよく耳に入ってくる。
一人、影のよく通る道を歩いていると、
「貴方は誰？」
と、目の前の人影が訪ねてきた。
「私は……
私は、■■。ただの平凡で、取るに足らない才能も無い一般人。
「本当に？」
本当に。誰も私を見ず、、人口の中にある“１”としか認識していないから。
「本当に？」
本当に。道行く人にこの世で一番くだらないものを聞いたら十人中十五人が”■■の個性”と答えるだろう。
「本当に？」
本当に。
…
遠い昔には、自分を見出そうとした時期もあった。
私と同い年の人が褒められ、私にだってできると、輝けると思って必死に走った。
でも、今はもうそんなことをする気力などない。
もう輝けないと気付いてしまったから。
光を発することは私には無理だと気付いてしまったから。
自分というものに失望して、諦めた。
私はもう、ただの影でしかない。
光の引き立て役。
私は、一体誰だろう？
もうただの影になってしまって、他と見分もつかない。

「貴女は誰？」
もう、わからない。
そんな時、あなたに出会った。
光っていて、まぶしくて、温かい。
きっと近くにいても、あなたのようになれない。
そう悟った。
せめて、あなたは輝き続けられますように。
「とても素敵ですね。」
私はそうなれなかったけど。
「ところで、あなたは？」

「私は……