風と共に生きた ─とある男の、小さな物語

生まれ変わった先の世界は、
思っていたよりも、あたたかかった。

光があり、風があり、
人の声があり、命の鼓動があった。

前世で閉ざしてしまったものたち。
無関心に背を向けていたものたち。

──それらすべてが、ここでは生きて、動いていた。

小さな掌に触れる温もり。
そっと呼びかける声。
ただそれだけで、
世界は、こんなにも優しかったのだと、知らされた。

俺はまだ、何も持っていない。
力も、名声も、誇れるものも、何一つ。

だけど、今度こそ。
この世界を、
この命を、
大切にしていきたいと思った。

ここから始まるのは──

ひとりの少年が、
ただ懸命に生きようとする、小さな物語。

どんな未来が待っているのかは、まだわからない。