そして数週間後、シャルル様が再び教会にやってきた。
ルーナを迎えに来る準備を終え、今日正式に迎えにきてくれたのである。
ルーナは、その頃自分が使っていた屋根面部屋で荷造りをしていた。
教会の孤児たちは男女に分かれて一部屋に六人ずつ同じ部屋を使うことになっています。
男性より女性の人数が多いため女性は二つの部屋で振り分けられることになりました。
しかし、ルーナとは誰も一緒の部屋になろうとはせず結局ルーナは、院長の言いつけにより屋根裏部屋がルーナの部屋になったのでした。
寄付でもらった茶色の小さなトランクに荷物を積めていく、あまり物を持っていないため、すぐに終わってしまった。
トランクには片方にしか荷物が入っておらずたくさんの隙間が出来てしまっている。
入っている物は、教会で貰った本が一冊、白色のワンピースが二着、パジャマが一着、穴の開いた靴下が一足、下着、そして日記帳、羽ペンとインクである。
その頃シャルルはというと、教会の院長と里親になるための契約書を結んでいたのでした。
「では説明は以上となります」
院長はシャルルの前に紙を差し出します。
紙には、こう記されていたのでした。。
【シャルル・アルジェントはパラディース教会に属するルーナを里親として家族に向かえる条件を満たしたことを私どもパラディース教会は承諾いたします】
シャルルは契約書にサインを書くと院長にその契約書を渡したのでした。
「アルジェント様、これにてルーナの里親として認められました。それでは今からルーナを呼んで参ります」
「ああ、頼んだよ」
「アルジェント様は、教会の入り口でお待ちになっていてください。ルーナを連れて参ります」
そういうと、院長はシャルルにお辞儀をすると、その部屋を出ていったのでした。
その頃ルーナは、最後にベッドを綺麗に整えていました。
ここで過ごすもの残りわずかな時間しかなのか、そう思いながら、今まで使っていた部屋を見渡すルーナ。
服装は着飾った綺麗な服とはいかずいつもの白色のワンピースを着ていたのでした。
すると、シスターが部屋にやって来た。
「ルーナ、準備が終わったわよね」
相変わらず、怖い声色で話しかけてくる。
「はい、シスター」
でも、ルーナは気にしない素振りで返事をしたのでした。
ルーナはトランクを急いで持ち上げます。
忘れ物はないはずだ、もし忘れてしまってもきっと捨てられるだけであろう。
「行きますよ」
シスターはルーナのことなんて気にしないで階段を下りていった。
『ありがとう』
ルーナは声には出さず口だけ動かして部屋に最後の感謝の言葉を告げると扉を閉めました。
換気のために開けた小さな小窓が部屋を照らしていますがルーナがいなくなった屋根裏部屋は静まりかえってしまいました。
教会の入り口まで向かうと、シャルルが立っていました。
近くには、馬車が停まっていました。
最後にルーナは院長とシスターたち数名にお辞儀をしながら挨拶をします。
「今までありがとうございました」
「ええ」
適当な返事をします。
誰ひとりとして悲しむ様子がないことは、ルーナ自身分かっていました。
院長を含む皆が居なくなってくれて清々したと伝わる表情をおさえられておらず黙って隣で見ていたシャルル様が口を開いたのでした。
「あなた方も最後に挨拶をなされないのですか?」
シャルル様の声色から怒りが伝わってくるのが分かります。
院長は、シャルルの声色で察したのかルーナに挨拶をする。
「元気で暮らしてくださいね」
ルーナはもう一度最後にお辞儀をしようとしたところでシャルルが止めた。
ルーナは驚き横目でシャルルの顔を見た次の瞬間シャルルは言った。
「さあ、行こう」
それだけ言うとシャルル様は振り返ると私が手に持っていた、トランクを何も言わず持ってくれたのでした。
その後、馬車に乗り込む時にシャルル様が手を差し伸べてくれました。
ふたりは向かい合うように席に着くと馬車が動き出す、教会の入り口を馬車が通りすぎていく少しずつ教会の建物から遠ざかっていく。
あれほどに出たいと願っていたけれど、離れてみると、少し寂しい気持ちがあることに驚きを感じる。
でも、確かに教会には私のいた証が残っている。
ルーナは初めて馬車に乗りどうすれば良いのか分からなかったため、窓の外を眺めたり手ものを見たりしていた。
凸凹の道を少し進むと、シャルル様が話し出した。
「ルーナ、道中寄りたい所があるのだけ寄っても良いだろうか。」
「もちろんです」
「何処に寄られるのですか?」
ルーナは思いきって質問してみた。
「それは着いてからのお楽しみだよ」
シャルルは人差し指を口元に添えルーナの質問には答えてくれなかったがシャルルのその姿は子どもみたいに無邪気であった。
少しすると、見慣れた田舎の景色から少しずつ景色が移り変わっていく。
私が慣れない馬車のなかでシャルル様は気遣ってくれた。
そして馬車が止まったのでした。
どうやら目的の場所に着いたようです。
シャルルから順番に馬車を下り終えると、ルーナは辺りを見回すとどうやら隣町までやって来たようだ。
目の前には古そうな洋服屋がルーナの目にあり、古そうな外観に比較するとショーウィンドウには、きらびやかな洋服が飾られています。
「着いておいで」
シャルルに言われるまま、その洋服屋に入っていくルーナ。
洋服屋の中に入ると沢山の服が並べられているし、おすすめの服が目立っておかれているのだが、シャルルはその服たちには見向きもせず奥へとどんどん進んでいく。
シャルルは、奥にある扉で立ち止まると扉をノックしました。
すると、扉に付いていた小窓が開き誰かと話し始めました。
ルーナには理解できない扉を開くための暗号のような言葉をシャルルが話すとその扉が開かれたのでした。
そこは、どうやらこのよう洋服屋の裏側のようで、少し歩くとまた扉が現れ、シャルルは、服の中からペンダントを手繰り寄せると紋章のようなものを扉に当てると、その扉の鍵が開く音がします。
その扉をシャルルが開くと、見たこともない景色がそこには広がっていたのでした。
ルーナはその景色に圧倒されてしまっていましたがシャルルは振り返りルーナのその姿を見て言いました。
「恐れることはない。着いておいで」
ルーナは、脈が速くなるのを感じながらも瞳を閉じておそるおそるその扉の向こうに足を踏み入れるのでした。
扉を通ると後ろからベルの音がしルーナは瞳を開け振り返るとそこにはガラスドアがあり【open】とプレートが吊るされていたのでした。
(どういうこと??)
ルーナの頭の中はこの状況を処理できていません。
「ルーナ」
シャルルに名前を呼ばれたルーナは慌ててシャルルの方を向くとそこに広がっていたのは、石畳の路地のように狭い通りで馬車が1台通れるほどの道にお店が所畝ましと、並んでいて沢山の人々が行き交っていたのでした。
「行こう」
そういうと、シャルルがルーナの手を握って強く握ってくれるのでした。
「離れないようにね」
突然、手を握られて緊張してしまいルーナはからだの動きがぎこちなくなってしまいました。
ふたりは歩きだし、シャルルは何も話すことなくどんどん歩いていく中でもルーナは瞳に映る全てが、見たことのない不思議な物ばかりで溢れていたのでした。
それに、ルーナが住んでいる世界では見慣れない服装ばかり着ている人を見かけます。
見たなかでは長い羽織のような服装を着た人を多く見かけます。
随分歩くと、シャルルは人気のない暗い細い路地に進んでいきます。
シャルルはとある店で足を止めるとお店に入っていきます。
お店の中を見るとどうやら洋服屋のようで帽子が壁一面に掛けられて、服は棚に乱雑に並べられたり、ハンガーラックには隙間なく服が掛けられています。
シャルルはそのままどんどん奥に進んでいきます。
会計する場所と思われる場所までやって来ましたが人の気配はありません。
シャルルはルーナの手を離し、離された手をルーナは思わずじっと見つめてしまいました。
「エル」
シャルルは人の気配がその場所に声をかけます。
「はいー」
カーテンが揺れ女性が顔を除かせたのでした。
「なんだアルじゃないの」
「久しぶりだね」
シャルルは表情を変えることなく挨拶をするし、店主と思われる女性は、薄く笑顔を見せたのでした。
ルーナは女性をシャルルの後ろの影からみてみると、容姿は二十代後半くらいに見えて茶色の髪の毛を後ろで丸めて括っており綺麗目な感じなのだか、雰囲気は何だか怖そうに見えたのでした。
「頼んでおいたものを頼むよ」
「かしこまりました。何だかアルが人を連れてくるなんて、珍しいこともあるものだね」
「まあね、そういうときもあるよ」
「そうなの。少し時間をもらってもいいかな?」
「ああ、もちろんだよ」
シャルルは、ルーナの方にからだを向ける。
「ルーナ、少しここで待っていてくれるかい。用事を思い出してすぐ戻ってくるから。この人は、口は悪いけど悪い人じゃないから大丈夫だよ。行ってくるね」
「は、はい」
そういうとシャルルはルーナを置いて何処かに行ってしまいました。
ルーナは何をすればいいのか分からず、視線を伏せ目がちにしながら女性とは反対の方向に向けます。
珍しい、見たことのないものばかりが並んでいる。
(これはなんだろう。鏡だろうか)
気になった商品を見ていると、突然女性店主がルーナに話しかけてきたのでした。
その声に肩がビクッと動いてしまいました。
ルーナは女性の方に振り返ります。
「怖がらなくていいよ。それより気になってたんだけどあんたはアルとはどんな関係なんだい?」
ルーナは突然のそんなことを言われてしまい困ってしまいました。
(どのようにして説明すれば良いのだろうか?「私たちの関係は家族です!」と言えば良いのだろうか。でもシャルル様が居ない前で言わない方が良いのではないか)
頭の中でグルグル考えを巡らせていく。
(でもさすがに初対面の人には言う勇気はないよー)
女性店主は、黙っているルーナをみかねたのか違う言葉で尋ねてくる。
「友達?知り合いとかなのかい?」
「はい。そうです」
今にも消え入りそうな小さな声でルーナは返事をした。
(そういうことに一様しておくことにしよう)
勢いよく、上向きに顔を上げてしまい髪の毛がずれてルーナの隠していた青色の瞳がみえてしまう。
その青色の瞳を見た女性店主は言いました。
「あんた、瞳の色が……」
女性店主の視線にたまらず勢い良く下を向き、ルーナは必死に髪で青色の瞳を隠したのでした。
(見られてしまった、見られたくなかったのに)
ルーナの咄嗟の行動に女性店主は申し訳なさそうに、ルーナに謝ると奥に入って行ってしまったのでした。
(そんなつもりではなかったのに)
罪悪感からかルーナは心の中でシャルルが早く戻ってきてほしい気持ちが増してしまったのでした。
すると、女性店主と入れ違いでシャルルが戻ってきたのです。
「ルーナ、怖いことはされなかったかい?」
ルーナは下を向きながら、小さな声で言いました。
「はい。だ、大丈夫です」
「そう、ルーナ、私の近くにおいで」
そういわれると、ルーナはシャルルの近くに寄っていきます。
しばらく待っていると、奥の方から女性店主が戻ってきて、シャルルに商品が入っている箱の中身を確認してもらうとダークグリーンの紙袋に入れてもらい女性店主から商品を受け取るとふたりはお店を出ていきます。
「ルーナ行こうか」
「はい」
歩き始めるとシャルルがルーナにいいました。
「何処か寄りたい店は見つかったかい?」
「あの、その前に質問なのですがここは何処なのですか?」
「ここは、ムーン横丁といって色々な店が軒を連ねていてね。ここに来れば何でも揃うと有名な場所なんだよ」
「そうなんですか。では、これはなんですか?」
ルーナは立ち止まると、店の入り口近くの棚の上に置かれていた懐中時計のようなものをシャルルに渡します。
「これは、時間を止めることができるものだよ」
「時間を止める?」
(どういうこと?シャルル様は何を言っているの?)
ルーナはシャルルの話していることが理解できませんでした。
すると、シャルル様は私には理解できない言葉で呪文を唱えると、懐中時計を開きます。
するとさっきまで歩いていたはずの人たちの動きが止まりルーナとシャルルの二人以外は誰も動いていません。
ルーナは唖然としてしまう。
「シャルル様、この状況はどういうことですか?」
するとシャルルは、さも自分にとっては当たり前かのように言いました。
「魔法だよ」
「ま・ほ・う?」
(どういうことなの?シャルル様が言っている言葉の意味が分からず脳が追い付いていかない)
「これは、魔道具で開くと時間を止めることが出来る」
「時間を…止める?」
「そして、僕は魔法使いなんだ」
「まほうつかい……?」
次々にシャルルの口から出てくる現実味のない言葉たちにルーナは戸惑いを隠せない。
「そう、魔法使い。今居るこの場所は、魔法界で、ここにいる人々はみんな魔法界に住んでいる住人たちだよ」
(私の聞いた話だと魔法使いはすでに全滅してしまったと言う話を聞いたことがある。まだ魔法使いがいたということなの?)
「ルーナは私が怖いかい?」
シャルルはルーナにそう尋ねました。
ルーナは頭を中を自分なりにゆっくりと整理していく。
「怖くありません」
ルーナは何故なのか口からすーとこの言葉が出てきていた彼の言葉なら、シャルル・アルジェントの言葉ならすんなりと信じられた。
「そうよかった。私は君に拒絶されるんじゃないかと思っていたんだ」
「拒絶なんてしません。こんな私を受け入れてくれた。そ、それに私とシャルル様は家族で私にとってシャルル様は大切な人だから!」
文脈がちぐはぐだけど伝えたいことは言えた。
「ルーナは嬉しい言葉を言ってくれるだね。それなら……」
そういうと、みるみるうちにシャルルの姿が若くなっていていくではありませんか。
さっきまで三十代後半くらいの姿だったはずなのに、魔法が溶けて二十代前半くらいに変わっていきます。
目の前で変わっていく姿をただ見ていることしか出来ないルーナ。
「ルーナ、これが僕の本当の姿だよ。実は、魔法で年をとっていたんだ」
その容姿は、手足が長く顔が小さく、エメラルドのような宝石のようなに緑色の瞳に綺麗な金髪の美しい青年だったのです。
今、この世界中の時間が止まっていて、私とシャルル様の二人きりしかこの世界にいないように思えてしまう。
そんな感覚にルーナはおそわれる。
彼の名前は、シャルル。
彼は、今日から私の主になる人である。
ルーナを迎えに来る準備を終え、今日正式に迎えにきてくれたのである。
ルーナは、その頃自分が使っていた屋根面部屋で荷造りをしていた。
教会の孤児たちは男女に分かれて一部屋に六人ずつ同じ部屋を使うことになっています。
男性より女性の人数が多いため女性は二つの部屋で振り分けられることになりました。
しかし、ルーナとは誰も一緒の部屋になろうとはせず結局ルーナは、院長の言いつけにより屋根裏部屋がルーナの部屋になったのでした。
寄付でもらった茶色の小さなトランクに荷物を積めていく、あまり物を持っていないため、すぐに終わってしまった。
トランクには片方にしか荷物が入っておらずたくさんの隙間が出来てしまっている。
入っている物は、教会で貰った本が一冊、白色のワンピースが二着、パジャマが一着、穴の開いた靴下が一足、下着、そして日記帳、羽ペンとインクである。
その頃シャルルはというと、教会の院長と里親になるための契約書を結んでいたのでした。
「では説明は以上となります」
院長はシャルルの前に紙を差し出します。
紙には、こう記されていたのでした。。
【シャルル・アルジェントはパラディース教会に属するルーナを里親として家族に向かえる条件を満たしたことを私どもパラディース教会は承諾いたします】
シャルルは契約書にサインを書くと院長にその契約書を渡したのでした。
「アルジェント様、これにてルーナの里親として認められました。それでは今からルーナを呼んで参ります」
「ああ、頼んだよ」
「アルジェント様は、教会の入り口でお待ちになっていてください。ルーナを連れて参ります」
そういうと、院長はシャルルにお辞儀をすると、その部屋を出ていったのでした。
その頃ルーナは、最後にベッドを綺麗に整えていました。
ここで過ごすもの残りわずかな時間しかなのか、そう思いながら、今まで使っていた部屋を見渡すルーナ。
服装は着飾った綺麗な服とはいかずいつもの白色のワンピースを着ていたのでした。
すると、シスターが部屋にやって来た。
「ルーナ、準備が終わったわよね」
相変わらず、怖い声色で話しかけてくる。
「はい、シスター」
でも、ルーナは気にしない素振りで返事をしたのでした。
ルーナはトランクを急いで持ち上げます。
忘れ物はないはずだ、もし忘れてしまってもきっと捨てられるだけであろう。
「行きますよ」
シスターはルーナのことなんて気にしないで階段を下りていった。
『ありがとう』
ルーナは声には出さず口だけ動かして部屋に最後の感謝の言葉を告げると扉を閉めました。
換気のために開けた小さな小窓が部屋を照らしていますがルーナがいなくなった屋根裏部屋は静まりかえってしまいました。
教会の入り口まで向かうと、シャルルが立っていました。
近くには、馬車が停まっていました。
最後にルーナは院長とシスターたち数名にお辞儀をしながら挨拶をします。
「今までありがとうございました」
「ええ」
適当な返事をします。
誰ひとりとして悲しむ様子がないことは、ルーナ自身分かっていました。
院長を含む皆が居なくなってくれて清々したと伝わる表情をおさえられておらず黙って隣で見ていたシャルル様が口を開いたのでした。
「あなた方も最後に挨拶をなされないのですか?」
シャルル様の声色から怒りが伝わってくるのが分かります。
院長は、シャルルの声色で察したのかルーナに挨拶をする。
「元気で暮らしてくださいね」
ルーナはもう一度最後にお辞儀をしようとしたところでシャルルが止めた。
ルーナは驚き横目でシャルルの顔を見た次の瞬間シャルルは言った。
「さあ、行こう」
それだけ言うとシャルル様は振り返ると私が手に持っていた、トランクを何も言わず持ってくれたのでした。
その後、馬車に乗り込む時にシャルル様が手を差し伸べてくれました。
ふたりは向かい合うように席に着くと馬車が動き出す、教会の入り口を馬車が通りすぎていく少しずつ教会の建物から遠ざかっていく。
あれほどに出たいと願っていたけれど、離れてみると、少し寂しい気持ちがあることに驚きを感じる。
でも、確かに教会には私のいた証が残っている。
ルーナは初めて馬車に乗りどうすれば良いのか分からなかったため、窓の外を眺めたり手ものを見たりしていた。
凸凹の道を少し進むと、シャルル様が話し出した。
「ルーナ、道中寄りたい所があるのだけ寄っても良いだろうか。」
「もちろんです」
「何処に寄られるのですか?」
ルーナは思いきって質問してみた。
「それは着いてからのお楽しみだよ」
シャルルは人差し指を口元に添えルーナの質問には答えてくれなかったがシャルルのその姿は子どもみたいに無邪気であった。
少しすると、見慣れた田舎の景色から少しずつ景色が移り変わっていく。
私が慣れない馬車のなかでシャルル様は気遣ってくれた。
そして馬車が止まったのでした。
どうやら目的の場所に着いたようです。
シャルルから順番に馬車を下り終えると、ルーナは辺りを見回すとどうやら隣町までやって来たようだ。
目の前には古そうな洋服屋がルーナの目にあり、古そうな外観に比較するとショーウィンドウには、きらびやかな洋服が飾られています。
「着いておいで」
シャルルに言われるまま、その洋服屋に入っていくルーナ。
洋服屋の中に入ると沢山の服が並べられているし、おすすめの服が目立っておかれているのだが、シャルルはその服たちには見向きもせず奥へとどんどん進んでいく。
シャルルは、奥にある扉で立ち止まると扉をノックしました。
すると、扉に付いていた小窓が開き誰かと話し始めました。
ルーナには理解できない扉を開くための暗号のような言葉をシャルルが話すとその扉が開かれたのでした。
そこは、どうやらこのよう洋服屋の裏側のようで、少し歩くとまた扉が現れ、シャルルは、服の中からペンダントを手繰り寄せると紋章のようなものを扉に当てると、その扉の鍵が開く音がします。
その扉をシャルルが開くと、見たこともない景色がそこには広がっていたのでした。
ルーナはその景色に圧倒されてしまっていましたがシャルルは振り返りルーナのその姿を見て言いました。
「恐れることはない。着いておいで」
ルーナは、脈が速くなるのを感じながらも瞳を閉じておそるおそるその扉の向こうに足を踏み入れるのでした。
扉を通ると後ろからベルの音がしルーナは瞳を開け振り返るとそこにはガラスドアがあり【open】とプレートが吊るされていたのでした。
(どういうこと??)
ルーナの頭の中はこの状況を処理できていません。
「ルーナ」
シャルルに名前を呼ばれたルーナは慌ててシャルルの方を向くとそこに広がっていたのは、石畳の路地のように狭い通りで馬車が1台通れるほどの道にお店が所畝ましと、並んでいて沢山の人々が行き交っていたのでした。
「行こう」
そういうと、シャルルがルーナの手を握って強く握ってくれるのでした。
「離れないようにね」
突然、手を握られて緊張してしまいルーナはからだの動きがぎこちなくなってしまいました。
ふたりは歩きだし、シャルルは何も話すことなくどんどん歩いていく中でもルーナは瞳に映る全てが、見たことのない不思議な物ばかりで溢れていたのでした。
それに、ルーナが住んでいる世界では見慣れない服装ばかり着ている人を見かけます。
見たなかでは長い羽織のような服装を着た人を多く見かけます。
随分歩くと、シャルルは人気のない暗い細い路地に進んでいきます。
シャルルはとある店で足を止めるとお店に入っていきます。
お店の中を見るとどうやら洋服屋のようで帽子が壁一面に掛けられて、服は棚に乱雑に並べられたり、ハンガーラックには隙間なく服が掛けられています。
シャルルはそのままどんどん奥に進んでいきます。
会計する場所と思われる場所までやって来ましたが人の気配はありません。
シャルルはルーナの手を離し、離された手をルーナは思わずじっと見つめてしまいました。
「エル」
シャルルは人の気配がその場所に声をかけます。
「はいー」
カーテンが揺れ女性が顔を除かせたのでした。
「なんだアルじゃないの」
「久しぶりだね」
シャルルは表情を変えることなく挨拶をするし、店主と思われる女性は、薄く笑顔を見せたのでした。
ルーナは女性をシャルルの後ろの影からみてみると、容姿は二十代後半くらいに見えて茶色の髪の毛を後ろで丸めて括っており綺麗目な感じなのだか、雰囲気は何だか怖そうに見えたのでした。
「頼んでおいたものを頼むよ」
「かしこまりました。何だかアルが人を連れてくるなんて、珍しいこともあるものだね」
「まあね、そういうときもあるよ」
「そうなの。少し時間をもらってもいいかな?」
「ああ、もちろんだよ」
シャルルは、ルーナの方にからだを向ける。
「ルーナ、少しここで待っていてくれるかい。用事を思い出してすぐ戻ってくるから。この人は、口は悪いけど悪い人じゃないから大丈夫だよ。行ってくるね」
「は、はい」
そういうとシャルルはルーナを置いて何処かに行ってしまいました。
ルーナは何をすればいいのか分からず、視線を伏せ目がちにしながら女性とは反対の方向に向けます。
珍しい、見たことのないものばかりが並んでいる。
(これはなんだろう。鏡だろうか)
気になった商品を見ていると、突然女性店主がルーナに話しかけてきたのでした。
その声に肩がビクッと動いてしまいました。
ルーナは女性の方に振り返ります。
「怖がらなくていいよ。それより気になってたんだけどあんたはアルとはどんな関係なんだい?」
ルーナは突然のそんなことを言われてしまい困ってしまいました。
(どのようにして説明すれば良いのだろうか?「私たちの関係は家族です!」と言えば良いのだろうか。でもシャルル様が居ない前で言わない方が良いのではないか)
頭の中でグルグル考えを巡らせていく。
(でもさすがに初対面の人には言う勇気はないよー)
女性店主は、黙っているルーナをみかねたのか違う言葉で尋ねてくる。
「友達?知り合いとかなのかい?」
「はい。そうです」
今にも消え入りそうな小さな声でルーナは返事をした。
(そういうことに一様しておくことにしよう)
勢いよく、上向きに顔を上げてしまい髪の毛がずれてルーナの隠していた青色の瞳がみえてしまう。
その青色の瞳を見た女性店主は言いました。
「あんた、瞳の色が……」
女性店主の視線にたまらず勢い良く下を向き、ルーナは必死に髪で青色の瞳を隠したのでした。
(見られてしまった、見られたくなかったのに)
ルーナの咄嗟の行動に女性店主は申し訳なさそうに、ルーナに謝ると奥に入って行ってしまったのでした。
(そんなつもりではなかったのに)
罪悪感からかルーナは心の中でシャルルが早く戻ってきてほしい気持ちが増してしまったのでした。
すると、女性店主と入れ違いでシャルルが戻ってきたのです。
「ルーナ、怖いことはされなかったかい?」
ルーナは下を向きながら、小さな声で言いました。
「はい。だ、大丈夫です」
「そう、ルーナ、私の近くにおいで」
そういわれると、ルーナはシャルルの近くに寄っていきます。
しばらく待っていると、奥の方から女性店主が戻ってきて、シャルルに商品が入っている箱の中身を確認してもらうとダークグリーンの紙袋に入れてもらい女性店主から商品を受け取るとふたりはお店を出ていきます。
「ルーナ行こうか」
「はい」
歩き始めるとシャルルがルーナにいいました。
「何処か寄りたい店は見つかったかい?」
「あの、その前に質問なのですがここは何処なのですか?」
「ここは、ムーン横丁といって色々な店が軒を連ねていてね。ここに来れば何でも揃うと有名な場所なんだよ」
「そうなんですか。では、これはなんですか?」
ルーナは立ち止まると、店の入り口近くの棚の上に置かれていた懐中時計のようなものをシャルルに渡します。
「これは、時間を止めることができるものだよ」
「時間を止める?」
(どういうこと?シャルル様は何を言っているの?)
ルーナはシャルルの話していることが理解できませんでした。
すると、シャルル様は私には理解できない言葉で呪文を唱えると、懐中時計を開きます。
するとさっきまで歩いていたはずの人たちの動きが止まりルーナとシャルルの二人以外は誰も動いていません。
ルーナは唖然としてしまう。
「シャルル様、この状況はどういうことですか?」
するとシャルルは、さも自分にとっては当たり前かのように言いました。
「魔法だよ」
「ま・ほ・う?」
(どういうことなの?シャルル様が言っている言葉の意味が分からず脳が追い付いていかない)
「これは、魔道具で開くと時間を止めることが出来る」
「時間を…止める?」
「そして、僕は魔法使いなんだ」
「まほうつかい……?」
次々にシャルルの口から出てくる現実味のない言葉たちにルーナは戸惑いを隠せない。
「そう、魔法使い。今居るこの場所は、魔法界で、ここにいる人々はみんな魔法界に住んでいる住人たちだよ」
(私の聞いた話だと魔法使いはすでに全滅してしまったと言う話を聞いたことがある。まだ魔法使いがいたということなの?)
「ルーナは私が怖いかい?」
シャルルはルーナにそう尋ねました。
ルーナは頭を中を自分なりにゆっくりと整理していく。
「怖くありません」
ルーナは何故なのか口からすーとこの言葉が出てきていた彼の言葉なら、シャルル・アルジェントの言葉ならすんなりと信じられた。
「そうよかった。私は君に拒絶されるんじゃないかと思っていたんだ」
「拒絶なんてしません。こんな私を受け入れてくれた。そ、それに私とシャルル様は家族で私にとってシャルル様は大切な人だから!」
文脈がちぐはぐだけど伝えたいことは言えた。
「ルーナは嬉しい言葉を言ってくれるだね。それなら……」
そういうと、みるみるうちにシャルルの姿が若くなっていていくではありませんか。
さっきまで三十代後半くらいの姿だったはずなのに、魔法が溶けて二十代前半くらいに変わっていきます。
目の前で変わっていく姿をただ見ていることしか出来ないルーナ。
「ルーナ、これが僕の本当の姿だよ。実は、魔法で年をとっていたんだ」
その容姿は、手足が長く顔が小さく、エメラルドのような宝石のようなに緑色の瞳に綺麗な金髪の美しい青年だったのです。
今、この世界中の時間が止まっていて、私とシャルル様の二人きりしかこの世界にいないように思えてしまう。
そんな感覚にルーナはおそわれる。
彼の名前は、シャルル。
彼は、今日から私の主になる人である。
