静寂に包まれた廊下を一人の男性が足音を響かせながら部屋に近づいてくる。
 部屋の扉が開かれ、眠っている少女に声をかけながら、カーテンを開くと窓の取っ手に手を掛け、窓を開ける。
 「●●●、よく眠れたかい?」
 眩しい光が部屋を照らし、眠い目を擦らながら少女がベッドからからだを起こし、男性は振り返ると窓から吹く風が男性の綺麗な金色の髪をなびかせている。
 「はい」 
 次の瞬間、強い風が吹いた。
 少女のベッドまで風が来て思わず目を閉じた。

 少女は現実に引き戻されるように目を覚ました。
 「夢か……」
 まだ残っている夢の記憶の部屋と似ても似つかない部屋に少女は暮らしていたのでした。
 フカフカのベッドにブラウン色の美しく揃えられた家具はこの部屋にはない。
 夢の中の男性はきっと私の思い描いた理想の光景なのだろうと思う。
 固いベッドから起き上がると少女は、小さな小窓を開いた。
 「今日もいい天気」

 ここは、モーントライト王国という国で王都からずっと南に向かうとクラウンという名前の国境にほど近い小さな田舎町がある。
 その町にあるパラディース教会という名前の教会で暮らしているのです。
 少女の名前は、ルーナといいこの教会にやって来た頃はまだ赤ん坊でした。
 その日は朝から大雨が降り続いているそんな天気の日だったという、教会の入り口で布のようなものに包まれて籠に入れられた状態でいたところを教会のシスターに見つけてもらい、そこから教会に併設されている孤児院で育てられた。
 私の名前であるルーナの名前の由来は、教会のシスターに見つけらた時に籠の中に紙が挟まっており、その紙にルーナと記されていてルーナという名前になったのである。
 教会にきてから十五年が経った。
 だがルーナの体型をみると年齢の割に痩せ細った細い腕と足。
 ルーナがいつもの着ている無地の白い長袖のワンピースに着替えますが、ルーナの体の大きさよりも小さなワンピースで袖口は短く、隠れるはずの膝は見えてしまっていてルーナのからだの大きさにはあっていません。
 それでもルーナはそのワンピースに着替えるのでした。
 もう少しで点呼の時間で、その前に昨日酌んできた桶の水で顔を洗うと髪の毛を簡単に手で梳かすと髪の毛を前に寄せると目が見えないように隠します。
 「よしこれでいいかな?」
 身支度を終えると部屋を出ていき、階段を下りている途中で小窓を閉め忘れていることを思い出します。
 「あ」
 以前、閉め忘れたときにちょうど雨で部屋中が水浸しになったことがあり晴れていても念のために閉めるようにしているのです。

 教会に孤児たちが集まり始めました。
 この教会は下は八歳から上は十五歳と幅広い子どもたちが二十人ほど暮らしています。
 ルーナは左側の一番後ろの長椅子に座りますが、誰もルーナの側に座ろうとはしません。
 この光景はルーナにとっていつもの事なのでした。
 シスターたちがやって来ると一人ずつ名前を呼ばれていきます。
 「クリス、エンジー、全員いますね」
 ルーナの名前は呼ばれません。
 これもいつもの事です。
 そのあと、祈りを捧げる時間を終えると各自自分達のやりたいことをやっていきます。
 ルーナは足早に教会から出ていくとひとりになれる場所に向かうのです。

 ルーナはまだ知らずにいたのです。
 これからルーナに訪れる出来事を……。
 それをルーナが知ることになるのはまだ先のはなし。