「……あるけど――」
尾崎の返答が聞こえるより速く、俺は足音を立てて自分の部屋に戻り、机まで向かった。そして今日初めてスマホを掴んで、腕を振りながらリビングまで戻る。
また椅子に座って、俺は自分のスマホの画面を突き出すように尾崎に向けた。
「URL、チャットアプリに送って」
「……でも」
「俺にも観ておいてもらいたいんだろ」
震えない声で言えただろうか。そんなことを気にしてる自分を哀れに思いながら、俺は交渉の体で言った。
手の振動を防ごうとスマホを握り直す。
息は荒いし心臓も不穏に加速している。重さにやられて腕を下すと、それは鈍い音を立ててテーブルに当たった。
ようやく、尾崎が自分のスマホを操作する。
「……送った」
「……わかった」
早いな、と言うのをこらえて、端的に返す。
尾崎の表情はわからない。ここまで俺はテーブルの表面に視線を縫い付けていたから。
少しだけ目を上げる。視界の端でスマホの一辺が、大きさに見合わない存在感を放っていた。
大丈夫だ。手先は安定している。
思い出したように呼吸をして、それが嫌に小刻みになっていると気づいた。
尾崎の返答が聞こえるより速く、俺は足音を立てて自分の部屋に戻り、机まで向かった。そして今日初めてスマホを掴んで、腕を振りながらリビングまで戻る。
また椅子に座って、俺は自分のスマホの画面を突き出すように尾崎に向けた。
「URL、チャットアプリに送って」
「……でも」
「俺にも観ておいてもらいたいんだろ」
震えない声で言えただろうか。そんなことを気にしてる自分を哀れに思いながら、俺は交渉の体で言った。
手の振動を防ごうとスマホを握り直す。
息は荒いし心臓も不穏に加速している。重さにやられて腕を下すと、それは鈍い音を立ててテーブルに当たった。
ようやく、尾崎が自分のスマホを操作する。
「……送った」
「……わかった」
早いな、と言うのをこらえて、端的に返す。
尾崎の表情はわからない。ここまで俺はテーブルの表面に視線を縫い付けていたから。
少しだけ目を上げる。視界の端でスマホの一辺が、大きさに見合わない存在感を放っていた。
大丈夫だ。手先は安定している。
思い出したように呼吸をして、それが嫌に小刻みになっていると気づいた。

