零時のアラームが止む時

 その靄を、尾崎の声が突き刺した。でもそれは問いに対する答えじゃなかった。
「明日が来ることを止められないの、あたしも、ふざけんなって、思ったことある」
 そう話す尾崎が俺のほうを見れてないのは、偶然じゃないと思った。
 息を詰めて、吐いて、訊く。
「なんで、俺に先の予定のこと言ったり、毎日様子見に来たり、新作で未読の本増やすとか、してたんだ?」
 尾崎はそれでも答えはよこさず、尋ねて返してきた。
「読んだ? これから?」
 俺はもらったきりの文庫の表紙をただ思い浮かべた。そして尾崎は問いを重ねる。
「三学期は、来れそう?」
 俺は姿勢を直して、また体を弛緩させた。
 ……わかんね。
「明日以降のこと、今は考えたくない」
 そう言って、色の薄い風景に目だけを向ける。一日が終わりに向かっていく様を初めて眺めたような気になった。
 今夜の零時も、アラームは鳴らないだろう。