零時のアラームが止む時

 深秋の朝の風は思いのほか気持ちよくて、文化祭が終了した学校の雰囲気は滑稽なほど通常通りだと思えた。
 アラームが止んでから一週間。俺はシャツとスラックスだけの制服を纏い、学校の正面入り口に向かうグラウンドを歩いていた。胸ポケットからスマホをはみ出させて、他には何も持たずに来ている。
 頭の中は恐ろしいくらいすっきりしていた。

『アラームが止んだんだ』
 俺は昨日、尾崎にそう言った。
『教頭が辞めるって聞いた日の夜から、聞かなくなった』
 テーブル越しに状況確認や近況報告をする俺たちの空気は緊迫していた。
『それ、偶然じゃないよね』
『だろうな』
 俺は同意して、決めたことを伝えた。
『とりあえず一回学校行く』
 尾崎は目を大きくしてすぐ、切羽詰まったような顔をした。
『え、それ、大丈夫なの?』
『わかんない。でも今さら失うものもないし。それで、なんだけど』
 俺はテーブルの上で拳を丸めた。
『ひとつ頼みたいことあるんだけど、いい?』

 スマホが振動して、止まった。俺はそれをなだめるように胸ポケットに触れた。