階段下の先で機械的な音がした。
 俺は途中だった本に栞を挟んで閉じ、今日読み終わった三冊と一緒に机の上に置いた。
 ゆっくりと下に降りる。リビングに入って時計を見ると、もうすぐ五時だった。
 壁に設置されたインターフォンの子機には画質の荒い、人が動く様子が映されていた。
 俺は反射的にそのモニターを覆った。そして息を整えて、通話を始めた。
「はい」
『ケント、居る?』
 聞きなれた口上に、すぐ通話を終わらせた。苛立ち半分安堵半分に玄関のドアを開ける。
「お邪魔」
 そう言って顔を見せたのは同級生の尾崎(おざき)亜依香(あいか)だ。校則範囲内のスカートを手で払いじっと俺の顔を睨むと、茶色く染めたショートヘアを振って当然のように上がってくる。
「……別に、何も変わんないぞ」
 いつものように我が物顔でリビングルームに向かう尾崎の後に続く。
「今日はケントに渡す物もあるし」