零時のアラームが止む時

 新しい「今日」か。光の具合からするに、まだそうなってから数時間程度だろうけど。
 そこまで意識して、ふと思った。
 次の日になる、日付が変わる。その瞬間が真夜中零時に存在するのだと覚えたのは、いつのことだ。幼い頃は、寝てる間に夜は過ぎ、また朝が来た時は無事に迎えられた次の日、それくらいで思っていればよかったのに。
 ――……よかったな。
 頭の中、声が響いた。
 俺はその声に引っ張られるように廊下に出て、兄の部屋のドアを開けた。
 窓からの光で室内を照らすと、息が詰まるくらい、自然なままの光景が広がった。
 俺はマットレスがむき出しの兄のベッドに座って、室内を見まわした。
 ベッドの隣、机の端を見る。そこでは兄の目覚まし時計が零時の位置に針を置いている。
 時間がおかしいのは電池を抜き取られているからだ。初めてアラームの幻聴を聞いた夜、俺がそうした。
 つまりこの時計はこの先ずっと、新しい一日の始まりを示し続けるということだ。
 俺は時計を掴み、自分のもとに引き寄せた。
 ――ほら
 ――無事、来たな、もう一日が。……よかったな。