零時のアラームが止む時

 オンラインという手段がなくて、そこの繋がりから離れても継続して関わっていられる相手というのは、そんなに多いものじゃない。そう考えると、尾崎は実はかなり貴重な存在なのかもしれないと、思った。

「これ、お土産」
 尾崎は紙包みをテーブルに置いた。
 入ってたのは一冊の文庫だった。
「本読んで過ごしてるって言ってから。要らないなら持って帰るけど」
 本の表紙を見下ろす。それは市販の小説で、著者名に俺は見覚えがあった。兄の本棚にある、全作を読み終えたと思ってた作家だ。詳細情報によると、この一冊の発行日は三日前。
 ……新作、出してたのか。
「……要る。……ありがとう」
「よかった」
 尾崎は椅子に座り直した。
 そして前髪を横に流して、口を開く。
「……報告だけど」
「何だ」
「教頭、辞めるって」
 俺は顔を上げて、目の前の同級生を向いた。
 見えているという、自分の生体反応を確認する。聞いた内容に、それだけがついていけていた。
「……俺がホームページを見れないのをいいことに適当な嘘ついてるんじゃなくて」
 すると尾崎は鞄から一枚の紙を出した。