「動画、公開するよ。講堂の大画面で」
文化祭本番の前日、尾崎は最終確認と称して俺にそう言った。
「いいんじゃないか」
俺は適当に返す。
「観てないのに?」
「もう、どうでもいい」
「……わかった」
二日間に渡る文化祭の本番中、俺はただ兄の本を読み続けた。二日間で完了したのは十五冊。基本の生命維持行為以外は、ただ読み続けるだけだった。
文化祭の最中も、その二晩が過ぎても、アラームは一夜足らず鳴った。寝ていてもそうじゃなくても、過ぎた昨日とやってきた明日という非情な時間を俺に突き付けるように。
次に尾崎が家に来たのは文化祭の二週間後、十一月の半ばの金曜日だった。
正直、あいつの訪問がなかった間は落ち着かなかった。だから、たまたま見ていた窓の外に見慣れた制服姿をとらえた時、俺は呼び鈴が聞こえるより早くドアを開けていた。
「……どうしたの」
「……来るのが見えたから」
「そっか」
尾崎はいつも通りに上がってきた。今日は通学鞄とは別に紙の包みを持っている。
この物理的な空間に、自分じゃない別の人がいるということが妙な新鮮味を帯びていた。
文化祭本番の前日、尾崎は最終確認と称して俺にそう言った。
「いいんじゃないか」
俺は適当に返す。
「観てないのに?」
「もう、どうでもいい」
「……わかった」
二日間に渡る文化祭の本番中、俺はただ兄の本を読み続けた。二日間で完了したのは十五冊。基本の生命維持行為以外は、ただ読み続けるだけだった。
文化祭の最中も、その二晩が過ぎても、アラームは一夜足らず鳴った。寝ていてもそうじゃなくても、過ぎた昨日とやってきた明日という非情な時間を俺に突き付けるように。
次に尾崎が家に来たのは文化祭の二週間後、十一月の半ばの金曜日だった。
正直、あいつの訪問がなかった間は落ち着かなかった。だから、たまたま見ていた窓の外に見慣れた制服姿をとらえた時、俺は呼び鈴が聞こえるより早くドアを開けていた。
「……どうしたの」
「……来るのが見えたから」
「そっか」
尾崎はいつも通りに上がってきた。今日は通学鞄とは別に紙の包みを持っている。
この物理的な空間に、自分じゃない別の人がいるということが妙な新鮮味を帯びていた。

