そう自分で思っていた日々のある夜、俺は夜中に急に目を覚ました。
 原因は、アラームの音だった。
 だけど夜中に鳴るアラームなどセットしないし外にも何の異変もない。何より、アラームの音は俺が鳴ったことを認識した瞬間に聞こえなくなったのだ。
 時間がわからず、俺は隣室に駆け込んで、机の端の目覚まし時計を見た。
 針が示した時刻は零時だった。
 悪い夢でも見たのかと、この時は気にかけなかった。
 だけど、次の日……その日? の夜も、同じようにアラームの音に起こされた。もう一度隣室の目覚まし時計を見て、時刻が零時であることを知って、震えた。
 それとなく親に、無人の隣室に手を付けたかどうか尋ねてみたら、何かを恐れるような顔を向けられた。
 その後、連夜の実証を経て俺は結論づける。
 これは幻聴だ。
 俺だけが、自分に聞かせてる、寝ていても起きていても、毎晩決まって狂いもなく、零時に鳴るアラーム。原因不明、解決方法はもっと不明。
 わけがわからなすぎて、自制するより早く尾崎にこのことを話して、「帰れ、しばらく来ないで休んでろ!」と、まるで囚人みたいに家まで引き連れられたのが、九月末の話だ。