外出する気になれず、夏休みになってからずっと家とコンビニ を往復するだけの日々。今日も、昼飯は コンビニで弁当を買った。
二階で一度部屋着に着替えてからリビングに下り、温めた弁当をダイニングテーブルに置いて座る。
誰もいない家の中があまりに静かなので、音楽でも流そうかとスマホを手にした時、家のインターホンが鳴った。画面には、見慣れた制服を着た配達員が映っている。
「はい」
『お届け物です』
俺はネットで買い物 をした覚えがないので、母親が何か買ったのだろうか。スマホを置き、ペットボトルのお茶をひと口飲んでから玄関に向かった。
ドアを開け、配達員から荷物を受け取ると、小さな箱に貼ってある宛名には佐倉渉と書かれていた。
――俺?
首を傾げつつも判を押し、「ご苦労さまです」と言ってドアを閉めた。
「なんか買ったっけ?」
短い廊下を歩きながらひとり言を呟き、差出人の名前を見た瞬間――。
「……えっ!? 」
思わず声を上げ、荷物を落としそうになった。慌てて持ち直した俺は、その場でじっと送り状を凝視する。
ちょっと待て、これはなんの悪戯 だ。というか、悪戯にしてはタチ が悪すぎるだろ!
睨みつけた差出人の欄、そこに書かれていたのは……。
〝吉川花〟
箱を持つ手が自然と震えた。
ふざけるな! 誰だよ! なんなんだよこれ!
その足で二階にある自室に入った俺は、ベッドの上に座り、しばらくその荷物に貼られた差出人の名前を見つめた。
間違いなく吉川花と書いてあり、宛名は佐倉渉。つまり俺になっている。
よく見ると、お届け指定日は今日の日付だが、受付日が五月六日となっていた。吉川が亡くなる三日前だ。
本当に吉川からの贈りものなら嬉しいが、それはあり得ない。こんな悪戯、許されることじゃない。
「怖すぎるだろ……」
誰がなんのためにと考えても永遠に答えは出ないため、俺は恐る恐る箱を開けた。
中に入っていたのは、ピンク色の封筒と一冊のノートだった。薄紫色のノートには、かわいらしい猫が二匹描かれている。厚みはそこまでない。
「なんだこれ」
呟きながらノートと封筒をそっと手に取り、ひとまず膝の上にのせた。封筒は伝票でも入っているのかと思ったが、それにしてはすいぶんとかわいい。
しばらく眺めていたが、いつまでもこうしているわけにはいかないので、思い切って封筒の中身を取り出して開いた。
〝渉くんへ〟
最初に飛び込んできた文字を見た瞬間、「は?」と声を出すのと同時に、手紙を閉じた。
嘘だろ。なんで……。
呼吸がわずかに乱れるのを感じながら、もう一度ゆっくりと手紙を開く。
〝 渉くんへ〟 と書かれた文字は多分、吉川の字だと思う。断言はできないけど、吉川の字なら何度も見たことがある。綺麗で整った字だ。
そんなはずはないと思いながらも、受付日が亡くなる前なので、吉川がこの日を指定して荷物を送ることは不可能ではない。
覚悟を決めた俺は、固唾をのんで手紙に目を通した。
二階で一度部屋着に着替えてからリビングに下り、温めた弁当をダイニングテーブルに置いて座る。
誰もいない家の中があまりに静かなので、音楽でも流そうかとスマホを手にした時、家のインターホンが鳴った。画面には、見慣れた制服を着た配達員が映っている。
「はい」
『お届け物です』
俺はネットで買い物 をした覚えがないので、母親が何か買ったのだろうか。スマホを置き、ペットボトルのお茶をひと口飲んでから玄関に向かった。
ドアを開け、配達員から荷物を受け取ると、小さな箱に貼ってある宛名には佐倉渉と書かれていた。
――俺?
首を傾げつつも判を押し、「ご苦労さまです」と言ってドアを閉めた。
「なんか買ったっけ?」
短い廊下を歩きながらひとり言を呟き、差出人の名前を見た瞬間――。
「……えっ!? 」
思わず声を上げ、荷物を落としそうになった。慌てて持ち直した俺は、その場でじっと送り状を凝視する。
ちょっと待て、これはなんの悪戯 だ。というか、悪戯にしてはタチ が悪すぎるだろ!
睨みつけた差出人の欄、そこに書かれていたのは……。
〝吉川花〟
箱を持つ手が自然と震えた。
ふざけるな! 誰だよ! なんなんだよこれ!
その足で二階にある自室に入った俺は、ベッドの上に座り、しばらくその荷物に貼られた差出人の名前を見つめた。
間違いなく吉川花と書いてあり、宛名は佐倉渉。つまり俺になっている。
よく見ると、お届け指定日は今日の日付だが、受付日が五月六日となっていた。吉川が亡くなる三日前だ。
本当に吉川からの贈りものなら嬉しいが、それはあり得ない。こんな悪戯、許されることじゃない。
「怖すぎるだろ……」
誰がなんのためにと考えても永遠に答えは出ないため、俺は恐る恐る箱を開けた。
中に入っていたのは、ピンク色の封筒と一冊のノートだった。薄紫色のノートには、かわいらしい猫が二匹描かれている。厚みはそこまでない。
「なんだこれ」
呟きながらノートと封筒をそっと手に取り、ひとまず膝の上にのせた。封筒は伝票でも入っているのかと思ったが、それにしてはすいぶんとかわいい。
しばらく眺めていたが、いつまでもこうしているわけにはいかないので、思い切って封筒の中身を取り出して開いた。
〝渉くんへ〟
最初に飛び込んできた文字を見た瞬間、「は?」と声を出すのと同時に、手紙を閉じた。
嘘だろ。なんで……。
呼吸がわずかに乱れるのを感じながら、もう一度ゆっくりと手紙を開く。
〝 渉くんへ〟 と書かれた文字は多分、吉川の字だと思う。断言はできないけど、吉川の字なら何度も見たことがある。綺麗で整った字だ。
そんなはずはないと思いながらも、受付日が亡くなる前なので、吉川がこの日を指定して荷物を送ることは不可能ではない。
覚悟を決めた俺は、固唾をのんで手紙に目を通した。



