頂点の上を見つめて



 「ではこれで委員会を終わります。お疲れさまでした」


 委員長の挨拶とともに、静かだった空気が崩れていく。委員たちの話し声や立つために椅子を引きずる音が辺りに散らばって。


 「よろしくね」
 多分同じ仕事になった人同士の会話、だと思っていたけれど。


 「小向さん?」


 それは私に向けられた一言だったみたい。声のほうを振り向くと、その人はまさしく。


 「あ、えっと。同じ曜日のカウンター担当の……上館さん」


 「うん。これからよろしくね」


 にこっと人懐っこそうな笑みを浮かべる。同じクラスじゃないけど絶対人気者だって確信できた。そして人気者はここで話を終わらせてはくれなくて。


 「ねぇ、小向さんって本好きなの?」


 「う~ん。好き、なのかな」


 「どんな本を読むの?」


 中心人物らしくぽんぽん質問してくる。正直あんまり話したくないし、帰りたかったけれど無視するのはよくないと、普段自分が読んでいるジャンルを頭に浮かべてみた。


 「私は青春ものとか、恋愛ものの小説を読んでて」


 「そうなんだ。僕はミステリー系かな。どんどん真実にたどり着いていく感じがいいんだよね」


 楽しそうに話す上館さん。それだけで本が大好きなんだなってわかる。私とは違う。


 「じゃあ、私そろそろ行かないと」


 急いで荷物を詰めて逃げるように歩き出そうとするけれど、「待って」と上館さんは私を止める。


 「お願いがあって」


 「お願い?」


 柔らかな笑みを消して真面目そうな表情になるから、私は身構えてしまう。そして。


 「文芸部に入ってみない?」


 「えっ?」


 身構えていたとはいえ、予想すらしていなかった発言に体がビクッと震える。だけどその驚きに反して、答えはもう決まっていた。


 「月曜日以外の放課後にあって。だから僕、月曜日選んだんだけど。部員たちはみんな、小向さんみたいに本が好きな人ばっかりで。でも三年生が引退した今、すごい部員不足でさ……」


 「ごめんなさい」


 「え、そんなすぐ断らなくても……」


 「放課後は忙しいんです。ごめんなさい」


 図書館独特の香りを鼻に感じながら歩いていく。今度こそ呼び止める声はなかった。