その週末はコンテストの締め切り日だった。日曜日の正午にそれは訪れる。画面上には、応募作のタイトルとその作者の文字が刻まれている。
今はちょうどその時間。その中にはもちろん私の名前も記されていた。下へスクロールし、応募状況を確認していく。
だけどスクロールができなくなると、私は首を傾げる。
今度は上へスクロールしてみるも、ますます疑問符が浮かび上がるだけだった。
どうして? どうしてないの?
コンテストの応募作品の作者の中に『神楽真澄』という文字の羅列は存在していなかった。
私はきっと喜んでいたと思う。大空くんと出会う前の私だったら。
見逃してしまった場面へと早戻しするように、あの時の記憶が私の視界に映る。
『大空くんは才能があっていいよね』
『大空くんさえいなければ……』
それ以上は聞けなかった。いや、聞きたくなかった。無理やりに本を閉ざすように、その現実から目を逸らして。
もう洗い落とせないくらいに汚れた言葉で、私は大空くんを傷つけてしまった。
大空くんはなにも悪くないのに。
明日謝ろう。許されることではないけれど。だけど、それでも謝りたい。どんなに言葉がまとまっていなくても。
気分転換にニュースアプリを開くと、大きな書店で大火災という記事が飛び込んできた。もちろん、あの連続放火事件。
見たことあるような建物……あっ。
この間行った書店。お母さんが入院していた病院の近くの木造建ての大型書店。
犯人は捕まった。顔を見ても知らない人。でも私が描いていた犯人像とは違っていた。もっと悪党の顔をしていると思ったのに、画面に映るその人は、今日すれ違ったんじゃないかって思うくらいどこにでもいそうな顔をしていた。
「本は綺麗事ばかり書かれていて、嫌だった。全部燃やしたかった」
犯人はそう供述したらしい。ずっとわからなかった。犯人が放火をする理由を。しかも狙いがいつも本屋さんなのを。
でもその理由を知って、すごく共感できた。そんな自分がすごく怖い。
そしてその建物から次の画面に切り替わったそのとき、私は自分が生きていることさえも忘れた。被害者の名前を見て。
『上館大空』
画面の光は無感情にその文字を浮かべていた。



