揺れる白いカーテンが、病室へと流れ込む夕焼けを半透明にしていた。
薄いオレンジ色の空間、私はお母さんの手を握りしめながら、半透明の景色を眺める。こうしてからどれだけの時間が経っただろうか。
「うぅ……」
「お母さん!」
私はすぐさまお母さんに視線を向ける。目を一度強く瞑ってからゆっくりと瞳を開く。
今開けたばかりだというのに、お母さんは私をまっすぐに見つめる。
「秋乃?」
一気に肩の力が抜ける。凝り固まっていた肩をマッサージで解してくれたかのような快感。
「お母さん! よかった~」
負担にならないように私は優しくベッドに横たわるその人を抱きしめる。
「心配かけてごめんね……」
「もう、ほんとだよ。お母さんがいなくなっちゃったら、私一人になるもん」
だから無理しないで。無理しないで休んで。だけどそうは言えなかった。
だって、無理をしないと私たちは生きてゆけないから。休んでもそれは解決しないことだから。
本当だったら私に任せてとか、そんな綺麗なことを言ってみたかった。
だけどそんなのは現実的に無理で。高校生に稼げる額は限られているから。
無理をしないでなんて、苦労を知らない人にしか吐けないと思う。
少なくとも私はそんな綺麗事を言えない。
「そうだね。本当にごめんね……でも大丈夫だから」
大丈夫だから。そうやって、退院したらまた働くんでしょ。
お母さんは柔らかな手を私の頭に乗せて撫でてゆく。私はお母さんの胸の中に顔をうずめたながら固く決意した。
くよくよしてる場合じゃない。また書き始めるんだと。



