頂点の上を見つめて



 眩しい光に意識が、現実へと連れて行かれる。頬にあたるなにかは、冷たくて、硬くて。いつもの肌触りのいい枕の感触じゃない。


 すっと上半身を起こすと、それが学習机だと気づく。目の前にはパソコンが黒くなってぐっすりと眠っている。


 そうだった。もう次の短編小説の締め切りまで時間がないのに私は……。


 カーテンからはまだ光の気配がしなくて、四角い電子機器で時間を見る。すぐ電源を切ろうとしたけど、指は無意識に画面をタッチしていた。


 まだ書きかけの原稿を閉じて、ニュースアプリに速報が入ってることに気づく。また連続放火だ。今回も本屋さんでの火災のようだ。この犯人はどうしてこんなことをするのだろう。なんて考えていたら、一通のメッセージが届いた。


 アルバイト先だと思っていたから『受賞者は神楽真澄』という記載を見たときは目が丸くなった。と、同時に世界が暗くなる。


 今回は応募数が多くて、発表時期が遅れると言っていた。だから落選した作品は夏休み中に書いたもの。つまり、創作に明け暮れた夏休みがすべて水の泡になったということ。


 また受賞できなかった。今まで何度も挑戦してきたのに。


 電源を消して机に突っ伏す。真っ暗な世界に小説と向き合っている自分が映る。中学三年生、受験の片手間に小説を書き始めた頃の私が。


 私が参加している短編コンテストは有名な出版社が主催していて、賞金はなんと十万円。そんな記載を見たときは、危うく座っていた椅子ごと、体が後ろへ倒れそうになったことを今でも覚えている。


 これで受賞できたらこんな大金がもらえる。そんな汚い理由で、私は書き始めた。もともと読んでいたから書くのもいけると思っていたけれど、それは甘くて。


 読むのと書くのじゃ全然違う。でも、それでも書き続けた。今では最終選考の常連にまでなった。


 だけどコンテストに応募するたび、あの名前が私の前に立ちはだかって。


 この人がいなければ、自分が受賞できたかもしれないのに。


 わかっている。それは書き手が一番思ってはいかないことだと。


 だけどそう思わないと、心が持たなくて。