見渡す限り白い雲と青い空の広がる庭園(ガーデン)で、唯一緑の葉を青々と茂らせ天高く(そび)え立つ大樹『リン・カ・ネーション』。大樹は一年中蕾をつけていて、一日に1つベルの形に似た白い大きな花を咲かせます。

 未満天使であるNoel(ノエル)たちはこのベルの花から生まれてくるのですが、ベルの花から生まれるNoel(ノエル)の体の大きさは決まっていません。下界人(げかいびと)のように皆が赤ん坊の経験をするわけではなく、赤ん坊であったり子どもであったり、成人であったり老人であったり。Noel(ノエル)として生まれ落ちるときの姿は様々。子どもや成人の姿で生まれたNoel(ノエル)の中には、その後、下界人と同じように体が成長し歳を重ねていく者もいます。

 Noel(ノエル)の見た目は下界人とほとんど同じです。(わたくし)たち天使には下界人がイメージする通り、羽根があり、金の環が頭上で輝いております。しかしそれは、立派に天使へ成長した証。未満天使であるNoel(ノエル)にはそれがありません。

 見た目は下界人と変わらないNoel(ノエル)ですが、彼らと下界人とでは大きく異なるところもあります。それは、Noel(ノエル)には感情がほとんどないということです。怒ることも、楽しむことも、悲しむこともありません。ただ、喜ぶことはほんの少しだけあります。

 感情のほとんどないNoel(ノエル)たちは、お互いに干渉しあうことはほとんどありません。それでも、日々新たな仲間を迎え入れることは、彼らにとって静かで穏やかな喜びなのです。

 大樹の花が開く時間には、いつでも静かで穏やかな喜びがNoel(ノエル)と大樹の周りを包んでおります。

 しかし、本日の開花は少々違いました。