(どうする? まあ、このダランカルがどうなっても構わない。本当なら俺が魔王の証明をすることもないんだ。
 だけど、この魔王城に居る限り違うってバレるとマズいからな)

 どうしたらいいのかと自問自答しながら真生はダランカルとライゼアを交互にみた。
 そう悩んでる最中、脳裏に【頑張ってください】そのあと【応援しております】そう浮かんでくる。そのため、イラッとし表情に出してしまった。

 「マオウ様が怒っていますう。そうですよね……ダランカルにアレだけのことを言われたのですもの」

 そう言い放つとライゼアは、キッとダランカルを睨んだ。

 「う、う……なんてことを……してしまったんだオレは……魔王さまが復活したって云うのに……弁明の余地なんかねえ」

 自分の死を覚悟しダランカルは地面に膝を付いたまま真生へ視線を向ける。

 「フゥー……お前のことなど怒っていない。自分に対し腹が立っただけだ」
 「はて? どうして魔王さまが自分に対して怒る必要が」
 「そ、それは……ダランカルに自分の能力を使い過ぎた。そこまで追い詰めることもなかったと思う。だから自分のしたことに対し嫌気がさしてな」

 そう言ったものの真生は誤魔化し切れたのか不安になっていた。

 「いや……魔王さま、そんなことはねえ。それが強さの証明、魔王さまだという証になる」
 「そ、そうか……まだ力の加減が分からないけどな」
 「そういえばマオウ様は復活したばかりで、まだ何も分からないのでしたわ」

 忘れていなかったのかと思い真生は苦笑する。

 「ライゼア、それってどいう事だ? 復活は分かるが……」

 ダランカルに問われライゼアは真生が異世界から転移してきたことを説明した。

 「……そういう事か。それで人間てことなんだな。これから真の覚醒をしなきゃならねえ。それなら……微力ではあるが何か力になれれば」
 「その時は頼む……って、そういえば証明できたんだよな?」
 「何を今更……武器を振り威圧だけで、このオレを恐怖させた実力は紛れもねえ魔王さまだ。それ以上の証明など必要ねえ」

 一呼吸おきダランカルは再び話し始める。

 「それよりも、オレのことを怒っていねぇって……そうなると処遇は?」
 「そうだな……俺は、これから強くならないといけない。俺の居た世界は平和だった。そのせいで戦闘の経験がないんだ」
 「おお……それであの威圧感。流石は魔王さまだ。それならば、このダランカルにお任せを……それほど必要ねえでしょうが」

 キリッとし真剣な顔でダランカルは真生を見据えた。

 「いや助かる。覚醒もしていない今、何もできないまま倒されたなんてことになったら」
 「それはねえと思うが。でも……そうだな。万が一ってこともあるか。じゃあ今から……」
 「待って、ダランカル。今から魔王マオウ様には、この世界のことについてとか色々学んで頂かないと」

 それを聞き真生は、ハァーっと息を漏らし疲れた顔をする。

 「今から、か……少し休みたいんだが」
 「まあ大変ですう……覚醒したばかりで力を使い過ぎてしまったのかもしれないわ」
 「ライゼア、それだけじゃねえと思うぞ。魔王さまの体にある歯形を見る限り血を吸われ過ぎたのも原因じゃねえのか?」

 そう言われライゼアは申し訳ないと思い真生を上目づかいでみた。

 「申し訳ありません! そうですよねえ……魔王さまは完全じゃなくて、まだ覚醒していない人間のままですう。それなのに、アタシは……」
 「確かに、そうかもしれない。だが大丈夫だ。マメにじゃなければ構わないぞ」

 その言葉を聞きライゼアは嬉しさのあまり目を潤ませながら真生に抱きつき首筋にキスをする。

 「ありがとうございますう。やはりマオウ様は偉大ですわあ」
 「ああ……じゃあ何処かで仮眠したいんだが」
 「それなら寝室で、お休みになられては?」

 ライゼアに言われ真生は頷いた。

 「そうだな……そうするか」

 それを聞きライゼアとダランカルは案内すると言い寝室の方へ向かい歩きだす。
 そのあとを真生は追ったのだった。